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【短編集】現実だってファンタジー
Mission・In・賽の河原 中編
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も、ただの積石とは訳が違う。

「ま、真逆(まさか)、貴様らぁッ!?」
「「「「くっくっくっくっくっ・・・・・・」」」」

その積石は―――「完成された供養の塔に寄り添うような形で積まれている」。

ようこそ(ウィルコメン)!」
「鬼さんこちら♪」
「崩せるのか?崩せねえかもなぁ〜!」

にやにやと性悪に口角を吊り上げる子供たちの顔を見て、その憎たらしいしたり顔をその目に映して、鬼は怒りと絶望の入り混じった怨嗟の咆哮を上げた。

「あ、ああっ・・・!あああ・・・ッ!!が、餓鬼共!やりやがって・・・餓鬼共ぉーーーーッ!!」


―――積み上げきった供養の塔は子供も鬼も決して崩してはいけない。もしも崩すとそれを崩した鬼、若しくは子供にその分の祟りが訪れてしまう。祟られると体調が急激に悪化して苦しむことになる。
そして、子供の場合は地蔵に救済されるまで。鬼の場合は、労働時間を担保に解呪の術を使える存在に治療を頼まなければいけなくなる。その労働時間たるや膨大。なんと一度の治療で500年近く無償労働しなければいけなくなる。無論その間の労働は徳には一切含まれず、出世など出来るはずもなし。しかもそれまで積んだ徳は供養の塔を崩した罪ですべて消滅する。この差の川原では最悪に近い仕打ちだった。

その供養の塔。この区画で2か所にしか存在しない完成した積石の一つを絶妙に崩さない形で、石が積まれているのだ。現在進行形で。積石の一部分が供養の塔の一部に隣接していたり圧し掛かっていたり。それでいて積石の形を崩すことなく、そのまま放っておけば完成されるであろう程度にしっかりとした積石だった。

つまり、迂闊に崩せば供養の塔が、自分の積んだ徳と未来の徳もろとも崩れ去る。

かといってこれを放置すれば、塔が完成して自分が責任を取らされ、閻魔の罰を受ける。

見たところ塔の近くに集まっている子供たちは『”ゐ”の九十九区画』きっての腕利きばかりだ。ここで崩さなければ確実に塔を完成させ、楽をして地蔵菩薩に救済されることになるだろう。
いや、あそこにいるメンバーの殆どは、確か既に救済が決定していた筈だ。だからここで完成させようとさせまいとこの小憎たらしい悪ガキどもはここから出ていく。だが全員がではない。何人かはそうではなく、救済の対象には含まれていない。それが実に嫌らしい。しかも子供たちはこちらに近づくと同時に積石の近くで円陣を組んで積石を包囲した。

「かごめがこめ♪」
「かごの中の積石は♪」
「いついつ崩す♪・・・ってな」
「鬼さんこちら!それとも・・・怖くて来れない?うふふっ・・・」
「や・・・止めろ!どけっ!早くどけ餓鬼共!ちくしょう、時間が・・・・・・時間がぁ!!」

傍から見れば、厳つい鬼がかごめかごめをする子供たち
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