Mission・In・賽の河原 中編
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石を崩すことに熱中するあまりに巡回中後ろに引き返したり同じ場所に留まった時に起きる。
もしもこのずれを引き起こせば賽の河原の子供たちの中でも積石が上手いものならば石の塔を完成させてしまう。事実、今までに幾度かこの理を破った鬼の所為で大勢の子供が本来の苦行量を終えないままに転生してしまった。中には積むのが下手な子供の代わりに、すでに塔を完成させた子供が石を積み、供養を完遂していないのに積石を完成させた子供までいる。
まぁそれは例外中の例外だが。あれは土台を下手な方の子供が造っていたため、その分の供養を否定できなくなっただけだ。
ともかく、そのようなことが起きるからこ理が存在する。不振向の理によって巡回の時間割は完全に決定されているし、後ろから何をされようが、何が起きようが、振り向いて確かめるのは許されない。破っていいことも何もない。不振向は絶対だ。破れば閻魔大王から直々に処罰が下る。たとえ軽い失態でも、相手が閻魔大王では軽く済まないものだ。
「くわばらくわばら・・・餓鬼どもが何をしてるかは知らないが、こんな気味の悪い日はとっとと仕事終わらせて帰りに一杯ひっかけるに限るぜ」
結局鬼は巡回時間である半刻の間、『”ゐ”の九十九区画』では一切子供を見なかった。背筋にうすら寒いものを感じながら、その鬼は次の区画へと通り過ぎて行った。
―――いいか、時間に余裕は一切ない。
―――通り過ぎ次第、一斉にかかれ。
―――判定は覚えているな?
―――バベル作戦はこれより第2段階へと移る。
―――天に上るぞ?準備はいいな?
= = =
鬼その2は、区画に入るなり完全に絶句した。遅れて、絞り出すように一言。
「なんだよ、これ・・・」
彼の眼前に広がるのはいつもの賽の河原と決定的に違う。まるで別世界。今まで1000年近くこの河原に勤めてきた中で、ただの一度も見たことのない世界が、そこにはあった。
並ぶ、並ぶ、並ぶ。ずらりずらりと、そこまでもどこまでも。足のやり場に困るほどに大量に設置された―――未完成の積石の大森林。全ての積石は3段目に突入した所で放棄されており、まだ完成には遠いが立派な積石である。
積石規定では、2段までは偶然重なったことになるため3段目からが積石として認定される。つまり3段の積石からは崩さなくてはいけないのだ。ここに広がる積石、その全てを。恐ろしい事に、それを設置したであろう子供たちはずいぶん遠くにいる。が、この周囲に一人もいない訳ではなく、数名はその未完成の積石をさらに量産している。
「な・・・何なんだよこれは!くそっ・・・何て量だ!」
こんな量の積石に加えて更に奥で石を積んでいる子供がいるという事実が、鬼を猛烈に焦らせた。このままでは
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