相対するは覇王と道化師
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は無く、本心で話しなさい」
言うと同時に懐かしい気分になった。
飄々と躱そうとしていた彼を、あの黄巾の終わりに問い詰めた時と似た言い回し。どういった反応をするかと試したかったのも一つ。
――さて、あの時とは違う状況だけど、お前の全てを見せて貰いましょうか。
そんな華琳の思惑など読み取れるはずも無く、ほっと息を一つついた秋斗は椅子に腰を持たれ掛けさせて直ぐに自然体になっていた。
「ありがとう。曹操殿がそう言うのならそうさせて貰おうかな。堅苦しいのは苦手だし。あ、店長のおいしいメシをゆったり楽しく食べたかったのもあるな」
楽しげな柔らかい笑みを見て、思考に空白が齎される。
華琳は普段の秋斗と話すのはこれが初めてであり、自分の思い描いていた姿とのギャップに着いて行けず。一太守を前にして、一度言われたくらいで態度を崩すモノがこれまで一人も居なかったのもあった。
砕いていいとは言ったモノの……華琳を前にしても緊張感の欠片も無い砕けきった様子、敵意など全く感じ取れない怯えを少し潜ませた優しい瞳、緩く笑みを浮かべてどれから食べようかと想いを馳せている秋斗を見て、華琳は眉を顰めてため息を落とした。
――これがあの黒麒麟だとは到底思えないわね。
期待した分だけ現状との違いが際立つ。それは分かっていても、やはり求めずにはいられなかった。
ただ、華琳は直ぐに思いもよらぬ反撃を受けることになった。
「曹操殿も面倒くさい事は無しにしよう。前の俺があなたに対してどんなだったかは知らないが、此処に誘われてたら同じようにこの時をあなたと楽しもうとしただろうよ。美味いメシが目の前にあるんだから腹黒く探り合うのなんざ食ってからにしよう……ってな」
彼は華琳が前の自分を交渉で求めた事を聞いている。
今もそれを求めていると判断して、自分がどのようなモノであるのかを見せた。
現在に至るまでの約一月の間に、昔の自分と今の自分が余り変わらない、と常に傍にいてくれた少女から聞いていたから。
「……それもそう、か。せっかく店長が極上の料理を用意してくれたのだから、礼を失するわけにはいかない……って、この『おむらいす』は見た事無いわね。それに『ぱすた』も」
華琳が思い知らされたのは秋斗の発言に関連してもう一つ。
普段の華琳では有り得ない失態。目の前の料理に目が行かない程に一つの想いに思考を捉われていたという事。
にやりと笑みを深めた秋斗は楽しげに喉を鳴らす。
「クク、やっと気付いてくれたか? まだ正式に店に出してない材料を使ったんだ。オムライスのソースはデミグラスでは無くビーフストロガノフ、山菜のクリームパスタはホワイトソースが少し違う、どっちも曹操殿を驚かす為に、俺が店について直ぐ店長に頼んだ
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