相対するは覇王と道化師
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ても手は出さなかったらしいから、下半身のだらしない他の男達と違って期待は出来そうね。
「まあ、私の大事な子達に手を出したら……生まれてきた事を後悔させてあげましょう」
自分で言って、何故か有り得ない事態だと思った。雛里の想いを知ったが故に。
同時に、僅かな苛立ちが心に湧く。
雛里が居ない間に朔夜のような才女を惹きこんでいたという事実が、華琳の心にささくれを作り出した。
あの慟哭を見てしまったが故に、そして彼女がどれだけ愛していたかを知っているが故に、雛里側に感情移入してしまうのは仕方のない事だと思っている……ではあっても、やはり納得が行かず、イライラとやぼったいモノが心に沸き立つのは止められない。
それは雛里の主として……では無く、近しい人の幸せを願う人として普通の感情。他人の恋愛沙汰には別に興味は無いとは思っていたが、存外、まだ華琳にもそういうモノへの興味は残っていたようだった。
その意味を、華琳はしっかりと理解していた。
気付かぬはずも無い。これは切り捨てた自身を他人に映しているのだから。
――あの時……私は雛里が羨ましかったもの。
切なく、苦しく、されども美しい。
感情を伴った愛とは人に許された営み。人を狂わせる要因の一つでありながら、人を美しく輝かせる要因でもある。
華琳は臣下達の事を愛している。黒麒麟が身体に向けるモノと同じく、臣下達は自身の身体の一部であると思っている。
だが……雛里の持っているモノはそれらとは別だと明確に区別している。時間を掛けて育んでいく他人との絆その最たるモノであり、滅私の想いに昇華しかねないモノ。
それを持つのは弱さだ、と華琳は既に切り捨てた。
愛する者を切り捨てなければならない事態となれば迷いなく切り捨てる。絆を繋いで来た愛する臣下達にさえ、命を捨てろと命じる。
彼女は忘れてはならない。
何を犠牲にしても、“自分が”この手で世に平穏を作り出したいのだから。
彼女は既にそういった苦悶を乗り越えていた。身を引き裂くような甚大な心の痛みを……長い年月の中、自問自答の夜を重ね、愛する者達に無言の信を向けられて。
そして華琳は知らない。黒麒麟も同じように思い悩み、最後の最後で大切な一人を切り捨てられなかった事を。
一番大切な一人を切り捨てる事態がどれほど自身の心を引き裂き、どれほど思考を一つに染め上げるかを……彼女はまだ知らない。
思考に潜りて歩むこと幾分、ふと気付けばすぐそこに娘娘の大きな店が見えた。
ぼんやりと灯りに照らされる入口に立っていたのは、彼女とは別の大陸制覇を目指す店長その人。
「お待ちしておりました。覇王様」
「夜分に無理を言って申し訳ないわね」
「いえいえ、慣れておりますから。三日以内に一度の夜分会合
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