相対するは覇王と道化師
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っているが。
――アレとは私一人で会っておかなければならない。
常に秋斗の隣にいる月は今日、霞と詠の三人で過ごさせている。秋蘭と流琉、沙和はまだ帰還して居ない。
朔夜は風に預けて来たが、稟とも交流を深めている頃合いだろう、と軍師三人の歓談は如何様なモノになるのかも華琳の興味を擽った。しかして今はそれに心向ける時では無い。
一人で歩く暗い街道はモノ寂しく感じる。行きかう人の気配も無く、店の呼子の活気溢れる声も無い。まるで華琳が作った街では無いような……そんな感覚。
中々に面白い発見だ、と場違いな感想が頭に浮かび、一人なのに苦笑を漏らす華琳は、あまり臣下に見せられるモノでは無いなと感じても、その笑みを抑える事は無かった。
夜にまで活気溢れる街にする方法はあるか、と考えても、まず思い浮かばない。
ふと、一人の少女が放った言葉を思い出した。
「広大にして歪な知識……か。それには夜の街を煌びやかに照らす方法もあるのかしらね」
一人ごちて。そのまま思考に潜る。
――そんな方法があれば、どれだけ人の世は発展出来るのか。そしてどれだけ、夜の闇に怯える事が少なくなるのだろうか。
夜は安息の眠りの時間であると同時に、獣達にとっては狩りの時間。人には暗闇の時間が確実に必要なれど、獣に堕ちたモノに対して怯える時間でもある。不安を少しでも拭い去れるならば僅かな淡い月明かりでさえ有り難いモノ。
期待は余りしていない。灯りを常に焚いているなど出来るはずも無いのだから、まずそんなモノは、天からの恵みをしがらみの多い人の手によって作り出す事は、到底不可能でしょうね。例えどれだけ、その男の知識が歪であろうと。
この時代に生きる華琳には分からない。夜でも昼間のように明るく出来る世界があり、文明の発達は幾多もの智者の発見によって華琳には想像も出来ない方向へと向かっている事を。
知れば彼女の興味は留まらず、渦巻く羨望が鎌首を擡げるだろう。
華琳は人の作り出す文化文明が好きなのだ。王でありながら学者肌でもある文化人。探究の面に於いても政務の時と変わらず、自身で確かめなければ気が済まないタイプ。
だからこそ、彼女は理想を追い求めながら現実的に物事を見る事も出来るのだが。
思考を向ける内、飄々とした男を思い出す。
春蘭並の武力、秋蘭並の頭の回転と判断力……初めは是非欲しかった。
男である、というのが彼女にとって少しばかり躊躇う所だが、それでも欲しいのに変わりは無い。後々になって自身の根幹を揺るがすからこそ絶対に欲しくなった。しかしただ目に見える才を鑑みただけでも華琳が欲しい人材ではある。
――聞けば、雛里達三人と四日に一度、寝台を共にしていたという。驚いたのは雛里達から誘った事だけれど、幾日同じ日が続い
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