相対するは覇王と道化師
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忠誠は求めない。徐晃と同じように客分扱いをする、というのでどうかしら?」
グッと拳を握りしめ、朔夜は薄笑いを浮かべる覇王を見据えた。
いつでも抗っていい、という自信が透けて見えて、ほんの少し苛立ちが込み上げる。
「秋兄様が正式に、あなたに仕えたなら私も仕えましょう」
「ふふ……それは何時、なのかしらね? 私の事は華琳でいいわ。気付いた事があればなんでも言いなさい。例え私とは違う意見であろうとも」
悪戯を仕掛けて見ても柳に風と流され、華琳が作る流れを崩せる事は無い。
自分で認めたから、真名を交換する事に否やは無いが、悔しく感じた朔夜はふいとそっぽを向いた。
「私の真名は……朔夜です。が……月姉さまと違って、あなたを姉さまとは呼びません。呼んでなんてあげません、華琳様」
「月の事も認めたのね。月を姉と呼ぶのならそのうち私の事も呼ぶしかなくなるわ」
綺麗に笑った華琳に先程の獰猛さは無く、愛おしげに言葉を零していた。まるで妹が成長するのを待つ姉のように。
すっかり冷めてしまったお茶を啜り、冷めてもやはりおいしいと思いながら、華琳はまた微笑む。
「本当に……これからが楽しみだわ。それには同意してくれるのでしょう? 朔夜」
「……同意して、あげます。今の秋兄様と一緒に、世界を変えるんですから楽しいに決まってます」
ぶすっとむくれて短く返事をした朔夜の顔を見る事も無く、華琳はのんびりとお茶を飲んだ。その冷めたお茶が無くなるまでは、目の前の仕事ではなく自分の弾む心を噛みしめようと。
当然、客分をすると言った以上は、有益な人材を即座に使わない華琳では無く、朔夜は夕暮れまで膨大な仕事の手伝いをさせられた事は言うまでも無い。
†
満天の星は美しく雲一つ無し。
晴れた空はこれほどまでに気持ちがいい。日輪煌く時も、真月輝く時も、である。
客分となった朔夜に仕事を手伝わせたおかげで今日の分が予定よりも早く終わり、まさか今日の内に会って置けるとは華琳も思わなかった。
仕事が終わって疲労困憊の様子の朔夜から齎されたのは、秋斗とは今日の夜に娘娘で会っておいた方がいい、という提案。
明日も仕事が立て込んでいる華琳としてはそれに乗り気であった。
第一、謁見の間を準備するにも形式が必要であり、部下達を並べれば秋斗が飄々と言葉巧みにぼかすのが目に見えている。それに……春蘭たちに休息を与えたかったのも一つ。
普段ならば、華琳が夜分に出歩くなら春蘭や秋蘭が共にいる。
しかし今日は一人。春蘭のお守りは季衣に固く言いつけておき、凪達区画警備隊の夜間巡行もあるから問題は無い。とは言っても、春蘭は待ちきれずに、夜半前には必ず迎えに来るのは分かり切
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