相対するは覇王と道化師
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う」
ふと、その言葉が興味を引いた。華琳は少し片目を細めて朔夜を見やった。
「中々に面白い話ね。私達の王才のカタチを分かり易く当て嵌めている。他の王も表してみるから、あなたの見解を聞かせて貰おうかしら」
「……よしなに」
朔夜は反抗する事無く、先の無礼がある為に華琳の望みを素直に聞いた。
幾人かを思い返すこと数瞬。
思い出すのはこれから戦う一人と、共闘していた一人と、乱世の果てに相対するであろう一人。
「そうね……『縋り付く』事も一つの王才。旧き王道を行くは『抱き込む』事を最上とするモノ。『心繋ぐ』事で救済を願う新しき王。これでどう?」
「袁紹、孫策、劉備、です」
示した人物の名をピタリと当ててくる朔夜を見て、華琳はさらに笑みを深める。
顎に一つ指を当て、朔夜は直ぐに己が見解を述べ始めた。
「袁紹は、名声と血筋に縋りつく事で民を導く王として確立されているのですね。なら本人は、身分の高いモノに与えられる、勉学が出来る状況からその才を養ってきただけであり、先天的にでは無く後天的にしか王に成り得ない平々凡々な名家の跡継ぎ。ただ、抑え付けが解き放たれれば、その反動での成長は計り知れず、また、押し上げる王佐を得れば強大にして狡猾に成り得る、というように、本人に何か不可測が有りさえすれば面白いように変わるでしょう。
孫策は、受け継がれてきた王の価値観と親が一代で築き上げた名声をその才で繋ぎ、絆深めた臣下と土地のモノ達を抱き込むに特化しているのでしょう。それでは新しい風を吹き込ませる事も出来ず、継続するだけで先の無い、くだらないガラクタの世となりそうです。血筋の裏切り、もしくは絆の断絶を“身内”から行われれば、新しき道が開け、小さき覇王では無くなります。
劉備は……やはり意味が分かりません。アレの妄言は店長からも姉からも聞いていますが、この大陸には猛毒に過ぎます。他者との協力有りきの末端の救済という惰弱な発想は中枢の壊死を促し、他者と繋がる事でしか示せない曖昧な指標は先の世を腐らせます。枠を決めずに和を繋ぐ事など愚かでしかないですから、アレだけは最上位に絶対立たせてはいけません。故に恐ろしい。あれは乱世終末後、百年の治世継続を齎すに特化しすぎています」
満足だ、というように華琳は頷いた。
頭脳の明晰さは申し分なく、王に対する価値観も彼女好みであった。
「王の在り方は一つでは無いですから、いろいろな王が居ても不思議ではありません。そして覇道の欠点も分かった上で、あなたが劉備と出会ってから敵対構想を練ったのも分かります。
力による乱世の平定、後の才による治世の確立は末端からの壊死を伴います。冷酷な覇だけで治める治世は恐怖の禍根を残します。だからこそ……今の構図を描いているあなたが正しい……
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