相対するは覇王と道化師
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大徳に大局を捻じ曲げる先見があるのは確実。徳に従う覇の現身は、あなたの根幹に陰りを齎します。世界を照らしたいと願う日輪に雲は必要ありません。払う為には、一度は手元に置くことが必須。だから今回のような交渉を設けた」
「ふふ……正解」
楽しい、と素直に思う。
外部に居ながら、少ない情報だけで自分のしこりを看破していた存在が居たというのは、この上無く面白く感じた。
彼女が隠れた理由とはあまり関係なく聞こえるが、華琳にとっては関係している話。
今の話から分かるように容易く大局を見れる程の頭脳を持つならば、その存在に惹きつけられるは必至。洛陽が戦火に沈む事を読み、黄巾の時点で娘娘を大陸で一番発展するであろう場所に建てさせた……その事実が、軍師という生き物を惹きつけないはずが無い。
つまりこの司馬仲達という少女は華琳とその男を比べていたのだ。
華琳の心に憤慨は無い。
自身の器の大きさから、そして失われたモノを認めているから。まだ……欲しくて仕方ないから。
「では話を戻します。確かにあなたは、私を従える事が出来る唯一の存在だったでしょう。直接面と向かって求められたなら、あなたに従っても構わないと思う程に。私の才は、主の器が小さければ溢れて溺れさせてしまいますから」
傲慢にして愚かしい……とは思わない。
華琳は既に、自身が張ったと思っていた糸が、他者から誘導されたモノだと気付いているが故に。
「……三姉妹の事を店長に話させたのがあなた。店長の気質を読み切り、幽州をより大きな混沌の渦に巻き込むようにさせた。おかしいと思っていたのよ。出来る限り観衆を巻き込みたくない優しいあの子達が、許可を出したとは言っても私が示した三つの街以外で自主的に歌ってくるなんてね。誰かが店長を煽らなければそうはならないでしょう?
その事実から、あなたが主を溺れさせるというのはよく分かる。人は誰かに操られる事には耐えられない。抗い、抑え付けようとしても疑念猜疑心の渦に呑み込まれ、いつ裏切られるか、自身を脅かされるかと恐れ慄き、殴られる前に殴り、殺される前に殺す。そうでなければ、自身の人生を諦観して傀儡になるか、自分の周りに置かずに何処かへ追いやるか腐らせるだけ。そういう者を下に置いて尚、揺るがない精神を持てる為政者は存外少ないもの。
あなたが私から隠れた理由は……その才をこの手から逃がすわけが無いのを分かっていて、黒麒麟と初めに出会いたかったから、でしょ?」
誰しも他人に操作されるのは心地いいモノでは無い。尤も、華琳はそういった、自分を操作しようとするような輩を自身に跪かせる事こそ求めているのだが。
「分かって、頂けているようで何よりです。日輪は私を呑み込めて、真月は私を受け入れられる。黒き大徳ならば背負える事もあったでしょ
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