相対するは覇王と道化師
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いた。呆れから、嬉しさから、興が削がれた落胆から。
秋斗は目を真ん丸にして声の聞こえた方を見やり続ける。
次いで、ゆっくりと開かれる引き戸から現れるは店長。やれやれと首を左右に振りながら、二人に苦笑と言葉を零した。
「覇王様、なんとか夜天の間への直接突撃は防ぎましたが……この始末です。一応店の受け付けで待って頂いておりますが……如何しますか?」
「……相変わらずあの子は……いいわ、直ぐに行く。今、あの子と徐晃を鉢合わせさせると店にも迷惑が掛かるから……ゆっくり三百数えて待てたらご褒美を増やしてあげる、と伝えて頂戴」
「承知いたしました」
紳士的なお辞儀をした店長は引き戸をゆっくりと閉めた。
なんとも言えない空気の中、華琳は目を細めて、不思議そうに首を捻っていた秋斗を見据えた。
「とりあえず今日はお開きとしましょう。最後にこれからのあなたの話を。現在と過去、どうなるか分からない不安定な存在に多くの人の命を預ける事は出来ない。あなたは客分のままで私の所に居て貰う事になるけれど……それでいいかしら?」
「ありがとうございます。私としては願ったりです」
突然、堅苦しい敬語に戻った秋斗を見て、何処か居心地の悪さを感じた華琳は顔を顰めた。
「……公式の場以外では崩して構わないわ。あと……あなた自身、心の底から人を救いたいと願うまで戦にも出さないし部隊も与えない。次の戦では……私の隣で戦争がどういうモノか眺めて貰う」
「俺に人を殺せと命じないのか?」
「命じられて殺すと言うなら、私の元には必要ない。嘗て、賊に堕ちた部下を、自分の部下に殺させたモノが居た。理を説き、何故そうするのかを思考させ、己が意思で殺せと命じた。私はその行いを高く評価している。どういう事か……分かるわね?」
目を見開き、秋斗は苦しげに眉を寄せた。
華琳に自分がどのようなモノであったのかを突き付けられた。覇王が求めているのは黒麒麟だ、と暗に示されたとも言えるが違う。
戻る為には最低限必要な覚悟を持て、戻らないにしてもそれくらいの事はして貰う、という意思表示だった。
「ああ、十分だ。肝に銘じておく」
返事の声は幾多の苦悶が混ざる。しかし瞳は闇色では無く、小さな輝きを秘めた黒。
満足そうに頷いた華琳は期待を心に浮かべながら、椅子から立ち上がった。
「よろしい。ゆっくり話せる時間が出来たらまた今日のような話をしましょう。客分としての仕事は変わらず風から与えるわ。明日から量が増えるけれど、自分の献策の責任は取って頂戴ね」
「信賞必罰、か。それもしっかり頭に刻んでおくよ。夜分まですまなかった」
ゆっくりと夜天の間の入り口に進む華琳を見て、秋斗は直ぐに引き戸を開きに行った。
「こちらから呼び出したのだから謝
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