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乱世の確率事象改変
相対するは覇王と道化師
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きたけれどちゃんと仕事をしているわ。それがどうかしたのかしら?」

 思いもよらぬ発言にも動揺は見せず、なんの事は無いというように華琳は聞き返した。
 ほっと胸を撫で下ろして少し俯いた秋斗は優しく微笑んだ……が、合わさずとも見える瞳からはまだ心配の色は消えない。

「いや……あの子も俺を支えてくれてた一人だって聞いたし……ちょっと気になっただけ――――」
「誤魔化すな徐公明。……何故、そこまで気に掛けている?」

 鋭く遮られ、ギクリと肩を引くつかせた秋斗は顔を上げず、目を合わせようとしない。
 華琳が真っ直ぐに放つのは探りの言葉。今はもう、秋斗は黒麒麟では無い為に。
 先ほどまでの語り合いで今の秋斗の人となりは把握していた。話せる範囲ならば真っ直ぐに返して来るような男だ、と。
 どう返すのかと見つめること数瞬、俯いたまま、秋斗は淡々と言葉を紡いでいく。ただし……その声は、哀しみからか掠れていた。

「……厳しい人だな、あなたは。
 あの子はさ、俺が起きた時に凄くほっとして、本当に嬉しそうな顔をしてたんだ。それが俺の言葉を聞いた途端……どん底に変わった。
 目を見開いて、震え出して、涙を幾つも零して、言葉を紡ごうとしても出なくて、唇を噛みしめて俯いて……俺の目の前から走り去ったんだ。だから……大丈夫なのかなって」

 瞬間、華琳の心には膨大な悲哀が溢れ出す。雛里の切望を受けたから、秋斗側がどのように見えていたかを聞かされて、その光景を鮮明に思い浮かべてしまった。

――私はあの子に対する把握が甘過ぎた。どれだけ……どれだけあの子が苦しんだのか。希望を持った瞬間に愛する男から直接絶望に叩き落とされた。間違いなく……心を凍らせてもおかしくない。それでもこの男の幸せを願い、代わりに背負うと言ったあの子は……どれだけの想いを抑え付けて私の元に来たのか

 愛おしさが溢れ出す。胸が痛い程に締め付けられ、今すぐに会いに行って抱きしめてやりたくなった。
 華琳の心にズキリと痛みが走った。それはまさに、彼女の切望を叶えられず、支えると言ったのに覇王として鳳凰の願いを叶えることしか出来なかった懺悔の痛み。戦に赴いて来た時点で殻に籠ってしまったその心の中身を覗けたなら、そういった痛みも含んで。
 同時に、秋斗が異常に見えた。今の秋斗にとっては……最悪の出会いのはずなのだ。
 今の自分が全く知らない少女を絶望に叩き落とした。自分は何もしていないというのに。

――今の徐晃は……濡れ衣を着せられた罪人となんら変わらない。

 自分の道筋を確かめたとも言っていた。ならば彼は、知らない罪を背負い続けている事に他ならない。知らない期待を向け続けられている事で間違いない。
 それでも飄々と先程まで笑っていた秋斗は……やはりどこかおか
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