相対するは覇王と道化師
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りに、笑顔でため息を一つ。
「では、頂きましょう」
静かに凛と鳴る声を以って、二人は酒を飲み干し、小さく短い宴が始まる。
存外、こういう時間も偶には悪くは無い、と華琳はその時感じたのだった。
†
華琳にとって、秋斗との食事の時間は短く感じた。
店長の料理は相変わらずの絶品であったが、やはり誰かと食べてこそ、そのおいしさが際立つ。
一刻ほど掛けて食事を終わらせてからもう三刻。今まだ、話の途中である。
話している事は料理についてやこの街の明るい話題、そしてどうすれば街の人が平穏に過ごせるかの試行錯誤や他愛ない民達との出来事やその感想。
生クリームを使った甘味の試作は出来たがまだ完成していない……とか。
西区でも治安のいい開けた場所、そこにある木に子供達が遊ぶ遊具を付けたら大盛況だ……とか。
衣服店の娘と書店の息子が婚儀を上げるから店の商品が安くなればいいなぁ……とか。
子供達と竹笛で遊んだが、今度は子供達が演奏を聞かせてくれるらしい……とか。
警備隊と共に街の治安を守る為に走り回ったりもする日があった……とか。
本当に些細な他愛ない話は……今までそんな細かい事を聞くような時間が無かったので新鮮に感じ、街の改善については、斬新なモノが幾つかあった。風には既に話しを通しているのは知っていたが、秋斗と煮詰めるのも中々に面白く感じた。
砕けた口調にも慣れ始めた。先程までの違和感がまるで無くなってしまっていた。
こうやって徐晃隊との絆を繋いで来たのだと良く分かる。平穏に暮らす秋斗は、兵達に最も近しい存在であったのだと納得もする。
親しみやすく、良く笑い、偶におどけて、気遣いも忘れず、細かい所に気付けても抜けている所もあって苛めやすい。
華琳には秋斗のようなやり方は出来ない。標として高き場所に立ち、兵達とは隔絶したモノを示す事によって導くのが華琳のやり方。
秋斗のは桃香のやり方に近い。兵や民の側にて絆を繋ぎ、共振する事で狂信させて導く。妄信、狂信の違いはあれど、平穏な街中に於いてはまさに近しい。ただし、戦場、否、乱世に関わる事柄に於いては……華琳のような覇の者となっていたのだが。
――この徐晃を守りたかったのが徐晃隊、か。
話しを聞きながらも器用に思考を重ねる華琳であったが、何時までも楽しい時間を続けているわけにもいかないとして、話の節目を探し始めた。
「――――ってなわけで、東区の警備隊でも第三区画……まあ他の区画も同じようなのが多いけど、なんでか知らんが他より規律や規則に対して厳格でな。仕事熱心で問題が起きた時の対処は速いからいいんだが、もうちょっと民に向ける笑顔が欲しいんじゃないか?」
「固い表情で接されるよりも親しみ
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