相対するは覇王と道化師
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品になる。時間指定してくれたから出来立てなのは保障しよう」
言うなり彼は小皿に取り分けて華琳の前に並べて行く。
やっと気付いてくれた……という事は、秋斗はずっと華琳が気付くのを待っていたという事に他ならず、砕いた雰囲気で話せるように秋斗も準備していたという事。
いつの間にか主導権を握られてしまったと感じて、それでも一本取られてしまったのは自分である為に何も言わない。ジト目で見据える事は忘れなかったが。
しかし彼の追撃はまだ終わらない。
料理を並べ切った秋斗は、なんの事は無いというように二つの杯を酒で満たし始めた。
「先の戦と今日の仕事、お疲れ様です。あなたの趣味嗜好は聞いているが、今日は俺みたいなのの晩酌で勘弁してくれたら助かる。
あっ! 仕事が終わってないかもしれんから……果実水を頼んだ方が良かったか。申し訳ない」
呆気にとられるとはまさにこの事。
有り得ない光景でありながら日常的なように見えるのは如何してか。
瞳を見れば思惑や警戒も見当たらず、酒に関しては計算で無くただ純粋にそうしたくてそうしているだけだった。
不敵な笑みでこちらの頸を狙っていたはずの男が申し訳なさげに酌をして、自身の不足に気付いてしゅんと謝る様があまりに可笑しく感じて、思わず華琳は苦笑が漏れた。
「ふふ……今日の分は朔夜に手伝って貰って終わったからお酒で構わないわ。それと取り分けてくれてありがとう」
彼女は風が真名を許した理由に納得が行った。
主導権を引っ繰り返すのは簡単に出来る。しかし秋斗はそんな事心底どうでもいいのだ。
ただ気兼ねなくこの時間を楽しみつつ、最後に真剣な話をしよう。忙しいのに時間を取ってくれたのだから楽しい時間を過ごして欲しい。酒を自分から注いで労ったのはそういう意味を込めてか、と華琳は考える。
――劉備とは違った意味で緩い。気遣いも出来て、でも苛めがいのある徐晃の事を風は気に入ったのね。
今度は間違わず、黒麒麟の幻影を重ねずに目の前の秋斗の事を見定めはじめた。
渦巻いていたはずの幾多の感情は、もう既にうやむやにされ、毒気を抜かれてしまった。
気にしないでいいと示され、ほっと息を付いた秋斗の前に、今度は華琳が先手を取って杯を掲げた。
「話す事は数あれど、食事の間は料理がおいしくなるように楽しませて貰いましょうか」
一寸面喰った秋斗は、にやりと笑うその悪戯好きを思わせる華琳の笑みに、同じような笑みを返して杯を持ち上げる。
「期待に応えられなかったら?」
「そうならないように楽しませなさい」
そちらから言いだしたのだから出来るのだろう、と言外に伝える彼女はもう先手を譲る事は無く、しかし既に楽しそうであった。
ぐっと言葉に詰まる秋斗は降参とばか
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