相対するは覇王と道化師
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すっと目を細めた少女は、華琳に覇気を向けられて少し震える。目の前に立つ覇王はまさしく、大陸を照らす才を持っているのだと理解して。
華琳は一方的に試されるのは嫌いだが、才あるモノ達との心地よい駆け引きは好きだった。
今回は、相手が誰であるのか確信している為に、桂花の時のように見せかけの怒りで試し返したりはしない。
ましてや、執務室に客人を通していたのは風の判断である。何かしらの意味があるのは予想に容易い。
「無礼を働き、申し訳ありません。これ以上の無礼は、あなたの引いている線を越えます。私から、名乗りましょう。始めまして、司馬……司馬仲達です」
頭を下げる仲達――――朔夜に対して驚く事も無く、当然というように華琳は目を切って横を通り抜け、執務室の椅子に腰を降ろした。
二つの湯飲みを並べ、机の上に置いてある魔法瓶からお茶を注ぐ。客人である事に変わりない為に、しかし先程の行いから最低限の持て成しに抑えた。
後に、ゆったりと脚を組み、ほんの小さく息を落としてから対面に座った少女を厳しく見やる。
「……私が曹孟徳よ。こちらから勧誘の文を出していたのだから謝る必要は無い。出向いて来た客人の戯れが過ぎた所で、部下の判断による結果なのだからあなたを責めるのはお門違いでしょう? 秘匿されていたけれど予測は付いていたわ。この街であなたのような存在が私の目を掻い潜りつつ安全に隠れられる場所など、他国の細作すら立ち入れない店長の店しか有り得ない。ただ、隠れた理由くらいは……教えて貰いましょうか」
それも大体予測は付いているが、とは華琳も続けなかった。朔夜自らに話させる事に意味がある。
無表情な朔夜はそのまま、桜色の唇からつらつらと言葉を紡ぎ出した。
「崩れかけた治世を、叩き壊す黄巾の乱も終わり、諸侯による群雄割拠その始まりを告げる連合が組まれた事は読み筋。そこから先、この大陸の向かう方向も全てが大局の赴くままに。
劉備を“取り入れもせず潰しもしなかった”あなたの思惑は大陸内部の迅速な安定、そして漢の興りに行われた徳と覇による敵対構想の再発。本来なら、徐州は袁家を滅亡させた後で手に入れるはずだった、ここまではよろしいですか?」
「それで合ってるわ」
目を細めた華琳に突き刺さるは冷たい輝きを放つ紺碧の視線。軍師の知性が見て取れる。
描いていた道筋をこうも簡単に当てられる程の頭脳は、なるほど、やはりただの文官である姉とは違うのだと分かり、華琳は嬉しくて口の端を吊り上げた。
「しかし大局を、捻じ曲げる程の一手が横合いから差し込まれ、あなたはその一手を放ったモノを欲した……否、前々から、欲してはいましたが逸早く手に入れる事に決めた、というのが正しいでしょう。
此処に、娘娘の支店展開を勧めた時点で、黒き
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