派遣社員になった訳だが……どうしよう
22話
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と白い雲だけの光景は心が洗われる。
ただ、この飛行機は要人用の高速旅客機なのであと数分でこの光景も終わりなので、少なからず本気で高々度で生きるアラガミを探してしまう。
この飛行機の有用性は理解できるが折角の移動なんだ、風景を楽しむ位の心の余裕はあってもいいんじゃないか?
「ああ、一応これを渡しておくよ」
なんだ?
サングラスに……黒のスーツ?
「変装用さ、流石に金色の目はちょっと怪しまれるし、その格好も公式の場には良くない」
成る程な……お心遣いありがとう、と言いたいがこのスーツはお前が着たくないから押し付けただけだろ、コラ。
「サングラスは……明らかにネタだな」
「ははは……公式の場ではちゃんとした服を着ろって言われたんだけど、どうも苦手でね。それに正装なら君の方が必要じゃないのかな?」
つくづく、気に食わないなその見透かした態度……ただ、今回はありがとうと言わせてもらおう。
さて、サカキはテストを見にいったので、その間俺は以前住んでいた街……の跡地に向かう。護衛といっても守るのはアラガミからなので、支部まで送り届けてしまえば俺の仕事は一先ず終わりだ。
あとの仕事はせいぜい、帰りの飛行機に乗るまでの間付き添う程度なのだ。
どうやら、あの時からこの街は使われなくなったらしいが、荒れてこそいるものの街の面影は残っている。
かつての住処だった家を見つけ、使うことが無くなり無用の存在になっていた鍵を鍵穴に差し込み、捻ると埃こそ被っているものの以前と変わらない風景があった。
支部の近くの居住区で買った酒とピロシキを、椅子に腰掛けて窓から外を眺めながら口に運ぶ。
相変わらず雪だけが降り続け、変化のあってないような光景だがこれを見るのも随分と久し振りだな。
だが、もうあの少女が訪ねて来ることもないし、あの夫妻と食事をすることも出来ない。そう考えるとこうして、かつての事を思い出すのはある種の未練とも言えるのかもしれないが、人間の感情とは自分のものであっても本当にままならないな。
あー……いかん、ここでへこたれてどうするんだ。
悩むなら動け、力不足を恥じるなら腕を磨け、後悔するなら前へ進め、それが俺のできる唯一の手向けだろうが。
さっさと墓参りして、帰るか。
ん?電話……ああ丁度いいタイミングだな。
「サカキか?丁度いいタイミングだ、俺の頼んだ場所は調べておいてくれたか?」
「君……一体どこに行ったんだい?君は私の護衛じゃないか……まぁいい、君の頼んでいた墓地の場所は……」
サカキの教えてくれた場所はここからそう遠くない場所で、アラガミの侵攻によって最近では誰も訪れられなくなったらしい。
成る程な。人が集まらない場所というのは有難いな。
出来れば墓参りのような真面目な姿はあまり見られたくないからな、何という
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