第三章、その4の3:サバイバル、オンボート
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て足元が覚束無くなるのに付け込み、熊美は彼の手を払い除け、そのがら空きの腹部に己の拳を叩き込んだ。
「っっぐっ・・・!?」
息を詰まらせるアダンの顔を更に殴る。後ろ足に身体を進ませるアダンの顔を更に殴り抜ける。彼の背が壁にどんと勢い良く衝突して、堆積した埃が宙に舞った。それ目掛けて、熊美が己の身体を丸めて突進していく。
「ちぇいさあああっ!!」
裂帛。熊美の丸太のような巨体がアダンの体躯にぶつかり、その背に置いていた木の壁を突き破った。大小の木片が彼らと共に宙を裂いて落下し、二人はがっしりと組み合いながら一階フロアへと落下していく。
パウリナが呆気に取られた様子でそれを見ている中、二人は木片の小雨と共に床に倒れこみ、その衝撃で圧し掛かった熊美の身体が別の方向へと転がっていった。フロアの壁際で動きを止めた熊美は、フロア中央近くで仰向けに倒れたアダンを見据えた。
「観念しろっ、凶賊っ!!!」
「へ、へへ・・・あんたも結構な悪だぜ・・・こんだけ暴れてぇ、宝物をぶち壊しておいてさぁ・・・。教会の爺共の毛根が、どんどん死滅していってるぜ」
「この惨禍、元はといえば全ては貴様が因となっている。貴様が大人しくしておれば、此処まで被害は拡大しなかった。大人しく鎖に繋がり、そして罰を受けよ。盗賊としての名誉を断頭台で全うするのだ」
「はぁ・・・はぁ・・・」
選択の余地を与えぬ羆の睨みにアダンは荒げた息を零す。そして煤けた顔をちらりと入り口に向けて、不敵な笑みを熊美に戻した。
「そうは主神が卸さない、ってか」
「・・・っ!!!」
熊美が疑問符を浮かべると同時に、其方目掛けて一つの火球が飛来してきた。熊美は俊敏な動きでキャビネットの陰へと隠れ事無きを得、舌打ちをした。
「ちっ、この火球は魔道士かっ!!」
「アダン殿っ、逃げるぞ!!こっちだ!!!」
「早くシロ!騎士団が来てイル!」
若々しい男の声が聞こえて、アダンはさっと身を起こして駆け出していく。熊美が追跡しようと顔を出すも飛来する火球に身を竦める一方であった。
アダンが建物の入り口へと辿り着いた時、若い男は手に持った杖に更なる赤い輝きを抱かせた。
「土産だっ、地獄の炎をとっておき給え!!」
杖が勢い良く振られ、男の胴体ほどの大きさもある火球が繰り出される。男達はさっと逃げ出し、火球は古びれた本棚にぶち当たって爆発した。爆ぜた火花と共に本棚が引火し、そして皹が目立つ床にも炎が伝わっていく。
「拙いっっ、火が!!」
熊美の悲鳴を他所に灼熱の手はぐんぐんと伸びていく。本棚があっという間に火に包まれ、火種となる破砕した木片を頼りに業火が広まっていく。このままでは自分達も、そして未だフロアに打ち伏せる兵達も危うい。
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