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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の3:サバイバル、オンボート
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な戦場へと身を投じたのだ。

「ちっ・・・」

 アダンは舌打ちする。互いに言葉通りの一進一退の様相を呈しており、決め手に欠ける勝負となっていた。相手の動きを読んでナイフを払い上げても手を引っ込められ、更に動こうとして足首を回そうとするならば熊美のナイフが飛んでくる。ナイフを返して柄でそれを受け止めて反撃の刃を振る頃には、既に熊美は得物が届かぬ距離に身を置いていた。このような攻勢の移動が幾度も、述べ二十合近くも斬り合えば流石のアダンといえども苛立ちは募る一方であった。
 薄暗き密室の中にそれが埃のように積ってか、或いは余りあるドワーフの力の耐え切れなかったか。アダンのナイフが熊美のナイフの柄に当たった瞬間、柄がばきっと破損し、ナイフの切っ先がパズルのピースのように欠けた。アダンは折れたナイフで熊美を牽制しながら身を退いて行き、後ろに伸ばした手が掴んだものをむんずと前に振り回す。

「えいやあああっ!!」
「きっ、貴様っ!!!」

 熊美は焦燥に駆られてナイフを捨て、自分へと回されるそれを両手と身体で受け止めた。アダンも己が振った物を見て思わず驚愕の念を覚える。己の胴体ほどの大きさもあろうかという程の、重々しい色合いをしたチェストであった。だが直ぐに思い直して両手でそれを押しやろうとする。信じられない事に、目の前の壮年の羆はドワーフの膂力に拮抗できる程の実力を持つらしい。アダンは歯を食い縛ってチェスト越しに熊美を後退させる。
 螺旋階段をそろそろと登ってきたパウリナが見たのは、木箱一つを挟んで汗を垂らし、歯茎を見せて筋肉を盛り上げる、実に雄雄しき男達であった。 

「うっわ・・・なんてむさ苦しい・・・」

 その手の者からすれば涎を零す光景を吐いて捨てる。
 熊美は精一杯に己の全力を出さんと気張り、顔面に玉の汗を流すが、而して矢張り種族の差であろうか、若々しきドワーフの押しを前に足を滑らせるだけであった。

「ふんごぉおおおっ・・・!!」
「踏ん張りがぁぁぁっ、足らんぜっ!!!」

 アダンは咆哮と共に種族の極限たる膂力を発揮した。握り締められたチェストがめきめきという音と共に軋み、熊美が壁に背を着けた途端、その厳しき顔に木箱が恐ろしき勢いで叩きつけられた。アダンの左腕が木箱を貫き、その奥に隠れる熊美の右肩をがっしりと掴み取って壁へと押し付ける。  

「むぐぉっ!!」
「おらァァっ!!」

 覇気を込めたアダンの右の拳が、空気を裂かんといわんばかりに熊美の側頭部を殴り抜ける。鼓膜と脳を揺さぶられて目の奥に星を弾かせる熊美。しかし無意識の内に抵抗するように掲げていた手が、アダンの両手をがっしりと掴み取っていた。
 アダンがそれを引くよりも先に、熊美の反撃の左の拳が彼の顎を殴り飛ばす。一瞬脳を左右に揺さぶられ
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