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王道を走れば:幻想にて
第三章、その4の3:サバイバル、オンボート
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摯に言う。
 
「教会の警護任務に就いていた者として感謝致します。パウリナさん、有難う御座いました」
「私からも礼を述べさせて下さい。有難う御座いました、パウリナ殿」
「ああっ、そんな頭まで下げられるだなんて・・・あたしは、その、ねぇ?」
「ええ、貴女はとても立派な事をしたのよ。貴女の勇気のお陰で被害が此処まで抑えられたわ。本当に有難う」
「あ、あははは・・・そうですか」

 頬をかりかりと掻く彼女はどうにも居心地が悪そうな格好であり、微笑を浮かべながら上目遣いに熊美の様子を窺っているようだ。慧卓は真剣な色を浮かべて熊美に話し掛ける。

「熊美さん、あいつらは一体なんなんでしょうか?」
「此度の事件を起こした者達、ですか?」
「そうだ。確か全部で二人だったような・・・」
「三人よ。二人は慧卓君が警護していた聖鐘へ、一人は宝物庫へそれぞれ狙っていたようね。何れにせよ、かなり計画性のある行動だったのは間違いないわ。
 ミルカ君が駆けつけたあの建物のバルコニー落下、職人の間では自重で崩れたんじゃないかって見方が強いわ。でもバルコニーに重みが掛かるのって当たり前じゃない?それが人が数人乗ったぐらいで壊れる方が奇妙だわ」
「では、其処に故意があるとお考えに?・・・矢張り彼らか。騒ぎを一方で起こして、本命の盗難に集中したかったのでしょうか」
「順当に考えるなら、そうだろうな。俺達が居たってのは計画の範囲外だったようですけど」
「・・・狙いは何だったんでしょうか。金銭か、宝飾品か?それとも教会の宝具?」
「そうねぇ・・・両方じゃないかしら?奪い方には些細な問題があったけど」
「些細じゃないでしょ、あれは!」

 慧卓は苦笑気味にそう言う。確かに、些細な問題の末に宝物庫が宝物ごと炎上したとあっては可笑しな話である。
 慧卓は言葉を言った後、考えに耽るように視線を俄かに落とした。その脳裏の映像で動いていたのは、理想の炎を目に宿した、チェスターという青年であった。

(・・・あの男。地図の北嶺をじっと見ていた・・・。もしかしたらあいつが本当に狙っていた物は、アクセサリーでも宝具でもない、此処には無い別の代物なのか?)
「あのぉ・・・ちょっといいですか?」
「ん?どうしました?」

 ふと掛けられたパウリナの言葉に反応して三者が見る。パウリナは居心地の悪さを払拭したがってか、そわそわとした様子で言う。

「実は、あたし知り合いと一緒に此処に来ていたんですけど・・・ちょっとさっきの騒ぎで逸(はぐ)れちゃいまして・・・。でもあたし、あの人がどこをほっつき歩いているかあまり心当たりが無いものなので・・・」
「あらら・・・じゃぁ一緒に探しましょうか?」
「・・・あの、いいんですか?」
「ええ・・・この程度の怪我ならまだ動け
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