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無欠の刃
アカデミー編
将棋
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 どういう気まぐれを起こせばそうなるのか。それだけこの男に、サスケ自身がそうしたいと思うような魅力があったのか。カトナは興味がひかれたように、将棋盤の下方の方へと座る。
 わざわざこの場に用意したらしい紫色の座布団に座り、並べられた駒の一つ、歩兵を進める。
 一手、一手。
 打ち合う。カトナはただ、自分の有利な戦場で戦うために守りを固め、シカマルはその守りを崩すために駒を進める。
 お互いの思考を読みあって兵を取り合い、駒を奪い、王をとる……王を守る。
 この手のゲームは得意だ。
 王を守ることさえできればいいのだ。守って守って守り切れば、活路は見える。相手に攻め込んでもらえばいい。
 勝手に相手が自滅してしまうように仕向けて、攻める時までは攻めない。 
 それがカトナのスタンスだ。
 シカマルが歩兵を進める。
 カトナは金将を進める。
 シカマルが飛車を動かす。
 カトナは守りを固める。
 そんなことを何回も繰り返していた時だった。

 「…あんた、すげぇな」

 本当に感嘆したように言ってくるシカマルに、カトナは顔を上げないまま問いかける。
 視線は、盤上から逸らされない。
 ただ、王将を見つめ、頭の中でシュミレーションし続け。そしてうつ。

 「何が」

 そんな様子のカトナに、肩をすくめながら、シカマルもまた盤上を眺める。
 一度、こんな展開と似たような展開に…似たような盤上になったことがある。あの時は、一番の最善手をうたれたからこそ勝てたが、今目の前で打たれた一手は多分一番の悪手だろう。

「あんた、悪手とか知らねぇだろ」
「あくて?」

 首をかしげたカトナに、シカマルは息を吐き出して、もう一手うつ。
 同時に、カトナの今までの戦い方を見てきて出した結論を言い放つ。

 「あんたは王を守ることに長けていて、それ以上に王を傷つける可能性を持つものに対する勘が、異様に鋭いから強いんだな」
 
 お手本通りというわけでも、セオリー通りというわけでもない。
 荒い手。道なき道を作る手。
 シカマルのような計算されつくされた手ではなく、だからといってサスケのような上級者を真似た一手でもない。その場で決められたような、その場のノリで決めつけたような、後先を見ない手だが、しかし、今までイタチ達に勝っていたのもうなずけるような手だ。
 カトナは、極端にいえば、王を討つような可能性がたとえ1パーセントだとしても存在していれば、それだけでその可能性を排除する。
 全て、王を傷つける可能性を持つすべてを排除する。
 そのために何個の駒を失おうとも、そのために何人の人間が死のうとも、王を討ちとる可能性があるものがなくなれば、それでいいのだ。
 だから、敵陣の王を討ちとらなければ勝てない―
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