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【短編集】現実だってファンタジー
俺馴? 外伝2-2 [R-15?]
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ンクリートの壁にぶつけられた頭蓋骨が嫌な音を立てる。額に激痛が走るが、思考を完全に停止させるには至らない。

「何も、考えたく、無い」

いっそのこと、何も考えずにこの気味の悪い世界に従っていれば不自然も自然へと変わっていくんじゃないないのか。記憶は捨てよう、これからは俺の目と耳で得た世界を上書きすれば、この足がつかない世界でも生きていける。

そう考えて、諦めかけていた。その2人が目の前を通るまでは。

みおぼえのある、40代の男女。
親の顔。人生で最も長く行動を共にした存在。
家庭の構成要素であり、学校を超える人格形成の場所を無償で提供し続けてきた唯一無二の存在。
どんなに記憶がぼやけても、それだけは忘れもせず、間違えもしなかった。

「父さん、母さん……」

何やら他愛もない話をしながら、買い物帰りなのか父の方はスーパーのビニール袋を抱えさせられている。母の名前は泊波(となみ)、父の名は寿郎(としろう)。見間違えるはずもない、紛れもなく2人は俺に名前を与えた人間だった。

俺は咄嗟にそちらに向かおうとして、そんな俺の気配に気付いた2人がしっかりとこちらの方を向いた。目があった。

「母さ――」
「ん?高校生か……こんにちわ。随分顔色が悪いみたいだが、困りごとかい?」
「あら、こんにちわ。おでこが真っ赤になっているけど、どうかしたのかしら?」

それはほんの一瞬の間に、2人が自然と口にした言語。それはまるで、今日に初めてその顔を見たとでも言わんばかりで、知古の人間に向けるそれとは考えづらいもの。俺の脳に蓄積されたデータとの決定的な相違に他ならなかった。

「――ッ!?」
「……どうかしたの?ひょっとして誰かと間違えたかしら?」
「おれたちは君とは会ったことがないはずだが……?」

2人の顔に明らかな戸惑いと、不審が見えた。
居場所が無くなった。そんな気がした。
きっと俺の現状を知らないあの2人にとっては「何をした」という意識も無かったんだろう。ただ、あの2人にだけは素直に言えると思っていた言葉ががらがらと瓦解して、ばらけたジグソーパズルのように元の形が分からなくなってしまった。

たった4文字の、子供でも分かる言葉だったのに。あと少しで完成する、本当に本当に簡単な――た??て……それだけだったのに。それに一瞬でも縋ってしまった俺の心は、辛うじて保っていた均衡を崩した。

もう耐えられない。真実を――避けていたものを俺に寄越せ。



 = =



さざめくんは格好いいか、と言われたら、別に格好良くはないと思う。

さざめくんは魅力的か、と訊かれたら、特別魅力的な所はないと思う。

でもさざめくんを愛しているか、と聞かれたら、私は迷いなくイエスというだろう。

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