俺馴? 外伝2-2 [R-15?]
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唇の傷なら口内炎の薬か?」
「うん、鎮痛効果もあるしそれでいいと思う」
棚の中を漁り、口内炎用の軟膏を取り出す。然程使われた形跡がないが、それでもきちんと置いてあるのは助かった。備えあれば憂いなし、という奴だろうかと考え、別に自分が用意したのではないかと思い直す。一先ずこれを用意していた保険医には感謝しておこう。
洗面台で手を洗った後に軟膏を人差し指に少量乗せた俺は、椅子を引っ張りいりこの前に座る。
「ほれ、口空けろ」
「え?さざめ君が付けるの?でも、私の唾ついちゃうよ?ばっちくない?」
「普通は俺の指が口に入ることを気にすると思うんだが……お前の唾くらい後で洗えばいいだろ、洗えば。いいから大人しく面倒みられろ」
普通なら、いりこに薬を投げ渡して「鏡でも見ながら自分でつけろ」と言う所だろうが、自分のうかつさが原因だと思うとそれは躊躇われた。それに、不思議と「いりこなら拒否しないだろう」という思いが頭の隅にあった。恐らく彼女は俺に唇を触られることを嫌がらないだろう。
それを裏付けるように、いりこは恥ずかしそうに頬を染めながらも首肯した。
指で彼女の柔らかい唇を軽く引っ張り、指で傷口に軟膏を可能な限り優しく、丹念に塗り込む。彼女の事を痛がらせやしないかとも思ったが、いい加減な塗り方では効果が望めない。やがて薬を塗り終えた俺は指を引いて唇を離した。
そうしてふと彼女の顔を見て――俺は再び、忘れかけていた違和感を思い出した。いや、その瞬間に俺は正気に戻ったのかもしれない。それはこちらの人間にとっては狂気を呼び起こされたように見えるのか、分からない。分からない事を、思い出した。
彼女の顔に現れていたのは、最早笑顔の域を踏み越えた顔だった。
興奮、悦楽の顔。堕落した女の顔。
紅潮した頬に、微かに乱れる吐息。涎でぬらりと妖艶な光沢を帯びた舌を唇に這わせ、その目は至高の快楽の一端に触れたかのようにとろんと垂れ下がっている。もっと、もっとと何かを求めるように。
彼女の口元から、粘性のある涎が一筋の弦を描いていた。その行き先は俺の指で、彼女から俺へ繋がる線。
「優しんだもんね。もっと乱暴にしても……ううん、なんでもない」
「……お前、何を、喜んでるんだ」
「喜んじゃ駄目なの?どうして?だって嬉しいじゃん。さざめくんが私の中に入って来るんだよ?」
分からない。解せない。理解できない。いや、頭が理解してはいけないと警告を出しているのだろうか。さもそれが当然であるかのように語るお前のその目に映る俺はどんな人間なんだ、いりこ。言いたくない。言いたくないが、俺は今のお前を――遠ざけたいよ。
「お前が、分からない」
その言葉に、ふといりこの顔に影が差した。それは自分の伝えたい意志が正しく受け止められていな
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