志乃「兄貴を道連れにする」
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階段の方を向くと、そこには俺と同じくパジャマ姿の志乃が突っ立っていた。手入れされていないその髪は寝癖だらけで、顔からは眠気以外のものが感じられない。さては寝不足だな。
その姿は、とても土曜日の亡霊じみた雰囲気を醸し出していた人物と同一とは思えなかった。
とりあえず、朝の社交辞令として声を掛けてみる。
「おはよ、志乃」
「……ん」
挨拶なのか呻きなのかよく分からない返答をした当の志乃は、そのまま俺の隣の椅子に座って、そのまま動かなくなった。なんかさっきの俺と同じような動きしてない?
とか思いながら、朝飯を胃にかきこむ。朝はちゃんと食わないとな。食わなくていいのは間食ぐらいだ。
ふと志乃の方を見てみると、いまだに椅子に座ったままうなだれていた。飯を食う気配が無い。つか、このままほっといたらこいつこの場で寝る。
「おい志乃、飯食った方がいいんじゃないか?」
一応そう声を掛けてみると、志乃は小さくうなずいてゆっくりと動き出した。かったるそうに動くその姿は、動物園にいるコアラのようにどんくさかった。いや、さっきの俺も人の事は言えないか。
やがて志乃も朝飯を食べ始め、俺達は互いに会話するわけでもなく、目の前の食事を咀嚼する。母さんはいつの間にかリビングからいなくなっていた。多分俺達が飯を食い終わるまで部屋でコス作りをしているのだろう。なんて面倒な動きだろうか。
先に食い終わったのは、勿論俺だった。食器を台所に持っていき、洗面所に向かう。コンタクトを付けて歯磨きをする。全く変わり映えのない展開だった。
俺が歯磨きをしながらリビングに戻った時、いまだ朝飯にありついている志乃が俺に声を掛けてきた。
「兄貴今何時」
テレビの左上に表示されてるだろうが。とはいえ、俺はそこまで小さい器でもないので素直に「七時四五分」と答える。学校登校完了時間は八時一五分。家が遠い人なら完全にアウトな時間だ。
幸い、俺達の家から藤崎高校までは近いのでこの時間でも遅刻ギリギリで間に合う。まぁ、多分走るなこれ。
「このままのんびり飯食ってたら、お前ガチで走る事になるぞ」
「それは兄貴も一緒」
「なんで?」
「兄貴を道連れにする」
こういう時ばっかり兄貴を使いやがって。まぁ、こいつ一人取り残して俺だけ先に家出るのは後味悪いな。
*****
八時。
俺達はやや速歩きで学校に向かっていた。
本当なら、もう少しだけ早く家を出る事が出来たのだが、志乃が片足だけ靴下を履いていないという、見事なボケをかましてくれたおかげで予定より遅めの登校になった。
「兄貴歩くの速いんだけど」
「お前は遅刻する事の危機感を覚え
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