志乃「兄貴を道連れにする」
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
り終え、自室に向かおうとした時、隣の部屋からタン、タンという音が聞こえてきた。
今となっては歯磨きぐらいに聴き慣れた音。これは、志乃がピアノの鍵盤を叩いている音だ。あいつは本物のピアノにオプションパーツを取り付けたものを使っていて、お気に入りのヘッドフォンをUSBのところに挿して弾いているのだ。これなら音漏れの心配はなく、こんな深夜でもピアノの練習をする事が出来るのだ。
毎日二時間ぐらいはやってると思う。俺が知らないところでもやってるんだろうが、俺が知る限りではそのぐらいだ。俺は実際に聴いた事ないんだけどな。
今部屋に入ってみようかとも考える。が、その考えを取り止める。そんな事をして練習の邪魔にでもなるのは御免だ。それに、俺がドアをノックしてもあいつは気付かない。俺がいつの間にか部屋にいた、みたいな絵が出来た時には俺は取り返しの付かない立場になっちまう。
というわけで、ここは大人しく自室に入る事にする。もう寝よう。明日は憂鬱な学校があるんだし。
*****
右耳元で目覚まし時計がけたたましく鳴り、俺は重たい目をゆっくりと開く。やべ、今日は寝起き悪い。すげえ肩重い。
俺は時折ふらつきながらも頑張ってリビングまでやって来る。うつろに開いている目から送られる情報は曖昧で、朝飯を作っている母さんの後ろ姿はいつも以上にぼやけている。俺、目悪いんだよ。
リビングのソファに腰を下ろして、俺はあくび混じりに母さんに問い掛ける。
「あれ、父さんは?」
「もう仕事行ったわよ。何か用事あったの?」
「別に何も無いけど。志乃は?もう行ったの?」
「ううん、多分まだ寝てると思う。あの子、もしかして目覚まし掛けてない?」
そんな心配そうな呟きを吐き出す母さんは、フライパンで焼かれたウィンナーを皿に乗せる。焼け焦げた部分が、俺の食欲をかき立てている。
「それにしても、あの伊月が警察から表彰だなんてねー。母さんも鼻が高いわ」
「んなことで鼻高くしてないで、とっとと洗濯の仕方覚えろよ」
「大丈夫大丈夫、おばあちゃんが全部やってくれるから」
「それじゃダメだろ!」
ホントにこの母親は……。料理作れて裁縫出来て、それなのに洗濯機の使い方すら覚えられないって、どんだけ個性的なんだよ。ステータス歪みすぎだっつの。
そこで自然とあくびが出る。やっぱ昨日は早く寝るべきだったな。このままだと学校で寝ちゃうぞ俺。
ここでずっと座っていると、その後行動したくなくなるので、俺はのそのそと朝ご飯を食べる準備を始める。
そうして朝食の準備が終わり、俺が朝飯を口に運ぼうとしたその時、階段を踏み歩く音が聞こえた。志乃のやつ、やっと起きたのか。
俺が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ