志乃「私は大丈夫」
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「私は大丈夫」
俺の言葉を遮って、志乃がいきなり声を上げた。どうやら、俺には言わせたくないらしい。
もちろん、今のこいつが大丈夫に見えるわけがない。大丈夫だったらこんなに、こんなに……
悲しそうな顔をしていない。
「大丈夫じゃないのに、そんな事言うな」
「……」
「こんなダメ兄貴だけど、何かあったら聞いて……」
「大丈夫だって言ってるでしょ!」
いきなり志乃が声のボリュームを上げた。途中まで話していた俺はその豹変ぶりに思わず目を丸くしてしまった。おい、どうした。
「本人が大丈夫だって言ってるんだから、兄貴は気にしないで」
まるで俺を拒絶するように、志乃はそう言ってくる。目をやると、志乃は曇った顔に苛立ちを上乗せしているような複雑な表情をしていた。
そんな妹に、俺は再び理解不能という壁にぶち当たった。こいつ、何で怒ってる。俺何か悪い事言ったか?
理不尽な怒りをぶちまけられて、俺も少し苛立つ。不満があるなら言えよ。じゃなきゃ分からないってのに。
「気にしないでいられるかよ。兄貴として、悩みを聞くのは当然だろ」
「……」
その言葉に、志乃は黙り込む。だが、こいつの身体全体から負のオーラが出ているような気がしてならない。気に障るような事は言ってない筈、だぞ?
その時、志乃が何かを押し込んでいるような低い声を呟いた。
「じゃあ、何で兄貴は私に構うの。私が話しかけるまでほとんど会話してなかったのに」
言われてみればそうだ。
俺と志乃がこうして話すようになったのは、この間一緒にカラオケに行った時からだ。その時話しかけたのは、紛れもないこいつだ。
けれど、俺はその理由を簡単に話す事が出来る。こんな問題、考えなくても解ける。
「それは、お前が俺の相棒だからだ」
「……は?」
俺の言葉に、志乃が拍子抜けしたような顔をこちらに向ける。それは段々と訝しげな表情へと変わり、否定の言葉を紡いだ。
「兄貴の相棒になった覚えは無い。むしろ兄貴は私の引き立て役」
「ああ、そうだったな。でも、それだけじゃない。それだけの理由だったら、お前と組む事自体無かったからな」
「……」
「お前が妹で、俺が兄貴だから。それが、俺がお前の悩みを聞く理由だ。お前が俺の悩みを聞いてくれた時のように」
そう言うと、志乃は呆れたような顔をして溜息を吐く。そして重たそうに口を開く。
「バカみたい。私は兄貴を『復活』はさせたけど、私が何かをしてもらう義理は無いよ」
志乃はそう言い終えた後、俺よりも前を歩き始めた。
「あ、おい」
俺が呼び止めようとして
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