第六話
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ャが工具箱を持って戻ってきた。
フェリの案内で入口となる通気口がある天井の下まで歩いていく。
周囲を見回し、クラリーベルはジャンプすると壁を蹴って天井の出っ張りにぶら下がる。そのまま通気口の入口を外すとするりと中に入る。
「私も――」
「アイシャはここまでだよ。剄を使えない人がいても足手まといだと思うから」
工具を自分のバックに移しながらレイフォンが言う。
同じように壁を蹴って上がろうとしていたアイシャがその足を止める。
汚染獣がいる場所に一般人がいていい事などない。錬金鋼技師なら後方待機も出来るがそういうわけでもないのだ。
「馬鹿にするわけじゃないんだ。けどそういう人たちを守るのが僕たちの役目で……同じ孤児院の人間なら、僕にとっては特にそうだから」
孤児院での在籍期間はレイフォンにとってそこまで絶対の違いではない。
無論、相手の印象としての大小はある。
在籍して直ぐにどこかへ消えた者、他の場所に移った者、体が保たなかった者。
レイフォンは色々な相手を見てきた。
孤児として確かな支えがないからこそ、互の支え合いが大事な場所だった。
同じ境遇の相手へのシンパシーもあったのかもしれない。
共にいた時間ではなく「そこに居た」という事実が、レイフォンにとっては大きな要因の一つだった。
レイフォンの言葉を聞いたアイシャは小さく頷き、バックからタオルを取り出す。
「レイフォンがそういうなら分かった。これ、持って行って」
「なにこれ」
「多分だけど、使うと思う。クラリーベルにも渡しておいて」
取り敢えずレイフォンは受け取りバッグの中にねじ込む。
通気口からクラリーベルが顔を出す。
「そう言えばゲームはレイフォンの負けですよ」
「……」
「視線そらしても無しにはなりませんよ。アイシャさんと私で一個ずつ何か罰ゲーム出しますから」
口角を上げるクラリーベルが一体何を要求してくるのかレイフォンには少し怖かった。
『ゲームってなんのことですか?』
「暇だから三人でしりとりしてたんですよ。単語じゃなくて会話で」
『……本当に暇だったんですねあなたたち』
呆れた声でフェリが言う。
壁を蹴って点検口の穴に捕まり、体を小さく揺らしたかと思うとそのまま中に入っていく。
アイシャに軽く手を振りレイフォンは通気口を締めた。
二人が点検口の中に消えて行って暫く。
閉じた蓋から視線をそらさずアイシャは見つめ続けていた。
どれだけ経っただろうか。
見回りの生徒がアイシャを見つけ、それに気づき駆け足で近寄る。
「おい、大丈夫か」
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