第六話
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をその無機質な眼だけが捉え続けていた。
損傷の少なさとニーナの個の戦力を理由に第十七小隊は雌性体の討伐を命じられた。と、なっている。
けれど実際はクラリーベルが一番の理由だ。
クラリーベルは十七小隊の区画の場所にいた。誰にも気づかれぬよう動き、気配を消し、幼生体を狩っていた。
一太刀一太刀と、準備運動でもするかのように秒刻みで幼生体の骸を増やしていく彼女にニーナは頼まれたのだ。
幼生体を受け持つから、雌性体を倒しに行ってくれと。
瞬きの間さえなく、そして次の瞬間にはクラリーベルの気配は消えていた。
向けられた笑顔と余りに掛け離れた場違いな力量にニーナはその事態を理解できなかった。
けれど直ぐさま生徒会長から同じ言葉が告げられ、その任を正式に与えられた。
いないフェリの代わりを宛てがわれ、予備人員としてまだ動ける武芸者を何人か連れ、そうしてニーナたちはここにいる。
書物にいる竜のようだとニーナは雌性体を見て思った。
その佇まいに、存在に、威圧感を感じているのだろう。予備として連れてきた武芸者たちはどこか引け腰だった。
裂かれ、切られ、潰され、喰われ。幼生体の脅威を見た後だ。無理もないことだろう。矜持から下げぬまでもその足は地に縫われたようだ。
不測の事態があるやもしれぬと、彼らの傍で備えておくよう小隊の仲間にニーナは告げる。気楽に上げられた了承の掌を受け一人、ニーナは足を前に出していく。
暑かった。風の通らぬ地の底だ。雌性体の体液は撒き散らされたうえ全身を覆う都市外装備を着ている。服の中は蒸し暑く汗が流れていくのがわかった。
暗かった。厚い地の底だ、日の明かりなど届かずましてや夜の刻で光など無い闇の中だ。
念威操者の助力を受けたバイザー越しの視界には、それなのにはっきりと近づくニーナを見る雌性体の眼があった。
迫るニーナに雌性体は僅かに頭部を揺り動かし、止まれと告げるように静かに口蓋を開き威嚇する。
自分の背丈ほども開かれた口に並ぶ自分の足ほどある大きさの牙。それを向けられてもなお、手に握る武器へ剄を込めながらニーナは前へ進んでいく。
止まらぬ敵に雌性体は叫んでいるようでもあった。なぜ貴様らがいるのだと。
叫び、その理由を獣ながら察して怒りを告げているようだった。
その口先まで辿り付きニーナは鉄鞭を振り上げる。
ただ、疲れていた。
ニーナはただの一度も戦線から引かず戦い続けていた。全身に傷を負いながら、それでも一匹でも多く倒し、一人でも多く助けようと一人で戦い続けていた。
初めての命を賭けた戦闘にニーナの精神はすり減っていた。
全身の筋肉は悲鳴を上げ剄脈も限界を訴えている。本当なら振り上げた手も直ぐに下ろし倒れ込みたかっ
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