第六話
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ように風が渦巻き流れ、舞う土煙がレイフォンの周囲からかき消される。
動くものがいなくなったことを確認しレイフォンは息を吐き残心を解いていく。
『お見事です』
リントが賞賛の言葉を告げる。
その声は臨場感のある映画を見たあとのようにどこかふわふわとしたものだ。
『理解を超えると現実感が乏しくなるのかな。それ以外の言葉が浮かばなくてごめんなさい』
「ありがとうございます」
『こう言ったら失礼かもしれないけど精巧な作り物を……物語の一場面を読んでいるみたいでした。一人で渡り合うなんて武芸者の人が知れば目標としたくなる戦い方だろうね』
余り褒められると気恥ずかしくなってくる。
けれど邪険にするわけにもいかず、レイフォンは取り敢えずと指摘する。
「僕のなんか真似しないほうがいいですよ。複数人で組んで戦うのが正しいやり方です」
『そうなんですか?』
「傷一つ負えば死ぬ場所で補助無しなんて自殺志願者くらいです。僕はたまたま上手くいっているだけです」
端子越しに考え込む気配がした。その先を聞いていいのか悩んでいるのだろう。
だから、レイフォンは待機状態に戻した剣を大げさに剣帯にしまう。
『……それじゃあツェルニへのルートを送るね』
バイザーにツェルニのある方角が示される。
レイフォンは来た道を戻っていった。
ツェルニの脚を下っていった先は土の中にあった。
地面の下にあった脆い空洞は都市の重さですり鉢状に崩壊し、周囲の土砂も巻き込み地盤沈下を引き起こしていた。
周囲の乾いた大地には亀裂が入り、足の周辺は採掘現場のように大きな土塊や岩が混ぜ返したようになっている。
大地に大きく開いた隙間から降りていった先、崩壊を免れた路を幾つもくぐり抜けていった先には開けた空間があった。
ツェルニの脚が動き出せば間違いなく崩れ落ちるだろう。人が問題なく動けるだけの広さがあるそこに都市外装備を着たニーナ達はいた。
上層よりも堅牢に作られ奇跡的に崩落を免れたそこは巣の根幹。幼生体たちが這い出て行った場所であり、その母である雌性体がいる場所だ。
ニーナが視線を向ける先、巣の奥には雌性体がいた。
蜥蜴に似た、幼生体など比ではない大きさをした雌性体は死に瀕していた。
大きく裂けた腹部は幼生体を生んだ名残だ。体液と臓物を地に溢しヌルヌルとした腹腔を晒している。
未熟な幼生体と違い大気や土中に含まれる汚染物質を餌として生きられるはずなのに、それでも持たぬ程に傷が大きいのだろう。近くに餌が、敵がいるというのに雌性体は動こうとしなかった。
ただじっと、ニーナたちの方
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