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鋼殻のレギオス IFの物語
第一章 【Re:Start】
第五話
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 もし目の前に虫が飛んでいたら人はどうするだろう。
 仮にその虫が明らかな敵意を示し、倒さねばならないとしたら。

 虫が小さければ手で打ち払えばいい。或いは両の手で潰すのもいい。
 仮に大きくとも嫌悪感さえ乗り越えれば変わらず叩き潰せるだろう。

 ではそれが虫ではなく猫であったら? 
 素手で叩きのめすことは可能かもしれないが手傷を負うだろう。棒や刃物を使えば多少は楽になる。

 猫ではなく犬であったらならば。それも大型犬であったらどうなる。
 歯が食い込めば肉を貫き骨まで届き、足の速さは桁違い。もはや素手では勝てず、武器を持ち出すしかない。
 ではそれが犬でなく、獅子であったら。或いはそれに匹敵する猛獣であったら。

 人が素手で勝てる動物は良くて自分の体重の半分の犬だと言われている。それほどまでに身体能力がかけ離れている。
 何せ敵は牙を生やし、爪を持ち、厚い皮膚に覆われた全身は筋肉の割合が高く俊敏に駆けるのだ。

 重量もまた力の一つだ。
 重ければ重いだけ肉は厚く、生半可な刃は通らなくなる。銃弾も筋肉で止められ、相手の怒りを買うだけで終わる。
 事実、大型獣が走行中の車両と衝突したが車は中破し獣はほぼ無傷、などという馬鹿げた耐久性を示したと事例もある。

 ならばこそ、敵の獣が同じ重さであったら。それ以上であったら。
 それも犬や猫のように複雑な内蔵や大きな脳を持つまでに発達した生物ではなく、原初の、簡易な構造故に非常に高い機能と生存性を有した虫に似たそれであったとしたら。
 一体、何を持てば勝てるのだろうか。




 汚染獣を最初にその視界に収めた時、待機していた武芸者達の最初の反応は拍子抜けした、というそれが近いだろう。
 虫に似た体躯をした個体だった。一目見た姿はゾウムシやコガネムシのようでもあった。
 だが意外に大きい。
 家畜として飼っている牛よりも三回りほど上の体躯はある。遠めに見てもわかるほど厚い殻で覆われ、急勾配を登ってきた多足に生えた鋭い爪がガッチリと地面を掴んでいる。眼は明確に武芸者たちの方を捉えている。
 躰に比べ小さい頭部には挟のような大顎がある。

 確かに強そうだ。だが、時間をかかるかもしれないが問題なく倒せる。これだけの仲間がいるのだから。気を張っていたのが馬鹿みたいだ。
 ある武芸者はそう思った。
 その矢先、次が姿を現す。数が十ほど増える。
 巣を踏んだのだから当然だ、そう思う。

 次が現れる。数が、二十増える。
 まだ、問題なく倒せる。そう思う。
 さらに次が現れる。三十増える。
 まだ、倒せる。

 次が現れる。さらに四十増える。
 次が現れる。さらに五十。
 次が現れ
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