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鋼殻のレギオス IFの物語
第一章 【Re:Start】
第五話
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す」

 そう言えばしていたなとレイフォンは思い出す。

「迎撃はここの人たちだけで大丈夫だと思っています。経験則から考えて幼生体ですよね?」
「だろうね、僕もそう思うよ。登っている脚部は一つみたいだし、数もそこまで多くない」

 幼生体。それは生まれて最初の状態であり、汚染獣の中では最弱に分類される個体。
 幼生体は雌性体から産み落とされるが、数が多いということは母体となる雌性体が多く必要になる。

 巣を踏み抜いたということは幼生体は生まれてまもなく、ならば周辺に雌性体がある程度の数いなければならない。
 都心の強さから想定できる巣の大きさもそうだが、一つの脚部しか登っていないならば雌性体はいても一匹二匹。そこまで数はいないはずだ。

「学園都市なのでグレンダンと比べるのもあれですが幼生体なら平気でしょう。自前の武芸科で何とかなりますよ」
「確かにそう、なのかな」

 言われればそんな気にもなってくる。

「大丈夫。何かあっても、レイフォンなら平気」
「クラリーベルもいるし、何とか出来るとは思うよ。そんなに信頼されても困るけど」

 よく分からない自信に満ち溢れたアイシャの言葉にレイフォンは返す。
 
「けど、確かに平気かな。取り敢えずニーナさんたちに任せよっか」
「武芸科の人たちも遊んでるわけじゃありませんし、大丈夫ですよ」

 そう言って三人はシェルターに入っていった。






 価値基準は生まれ育った環境で培われる。それは金銭感覚や衛生感覚でもあり、安全への認識でもある。
 故郷とは違うと知識では知っていても、クラリーベルとレイフォンが武芸者の基準をグレンダンに置いたのは仕方がないことだろう。
 恵まれた育った人間が危険とは知りつつ「流石にないだろう」と無意識に基準を引き、無防備を晒しスラム街で財布や命を奪われる。
 それと似たことを二人はしていた。

 汚染獣戦の経験者として、気づけた可能性はあった。
 だがそこにいたのは一年近く戦場から逃げていた男と、手合わせの相手でも特に不足がなく気まぐれでしか汚染獣戦に出ない女の二人だ。
 また、一般教養科の二人は武芸科生の力量を正しく理解する機会がなかった。
 知り合いであるニーナを始め、対抗試合で見た小隊員の力量をツェルニにおける基準として見てしまっていた。
 



 それから暫くの後、汚染獣の襲来が目前と迫りシェルターへの通路は全て封鎖された。
 場違い過ぎる程の力量を持つ二人は最後まで気づかなかった。
 質も量も経験も恵まれた故郷とは違い、学園都市にいる武芸者にとっての幼生体の重さを。
 
 そして、獣は襲来した。












 







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