第一章 【Re:Start】
第五話
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る不安と苛立ち。
音に成りきれていないその騒がしさをヴァンゼは感じながらカリアンに言う。
「勝てると思うか」
それはこの場にいる全員が抱いている疑問だ。その答えを出せないからこそ不安に駆られる。
「そういう君はどうだい」
「後のない戦いに負けると思って挑む奴などいない」
「精神論かい?」
「そうだ。それと、質問に質問で返すな」
ごもっともだとカリアンは小さく笑う。
「私は、勝つしかないと思っているよ」
「お前だって精神論だろうが」
「実際問題、何がどうであろうと勝つしかないのが事実だ」
家畜を飼い植物を育て娯楽に興じる。そんな生活をしていれば忘れがちだが、人は逃げ回って生きているのだ。
この世界における覇者とは環境適応者である汚染獣であり、上位に位置する捕食者。彼らからすれば人間は被捕食者でしかない。
負けても二年後がある戦争ではない。都市が死ぬまでに逃げ出す猶予があるわけでもない。
負ければ死ぬ。そこで終わりだ。
ならばこそ、負けた場合など考える必要はない。
「子供の頃に一度、故郷が襲われたことはある。シェルターに篭もって気づいたら終わっていたよ。知識では知っているが実際に戦いに挑むのは初めてだ。戦力比を図ることも、最もらしい推論を立てることも出来ない。何より勝つしかない以上、勝つことを前提に今できる最善を動くしかないさ」
そもそもレギオスという存在自体、汚染獣と戦うようには出来ていない。都市精霊によって動かされるレギオスは汚染獣から逃げ回るように動く。
逃げることが前提。その結果、備えに必要な経験が欠落している。
戦うのは逃げることが不可能で、どうしようもない場合の最後の手段なのだ。
「この世界で生きている以上向き合わなければいきない事態だ」
映像の中で蠢く無数の汚染獣の姿をカリアンは見る。
遠目に撮されたそれは正確な大きさをイメージさせない。無骨なコガネムシが一面に張り付いているようにも見える。
だが一緒に映っている都市の脚部を考えればその一つ一つが容易く人を上回る大きさだと分かる。不安は消せない。
ヴァンゼが背を向ける。
「実地に出る君たちにこんな場所からで済まないが、出来る限りの事はさせてもらう。頼んだよ」
「馬鹿が、『こんな場所』でなければ困る。それが俺たちの役割だ」
はっきりとした口調でヴァンゼはいい切り部屋を出ていった。
少し時間を遡り、レイフォンは小走りで誰もいない道をかけていた。ばら蒔いた配達物の一部が排水口に入ったせいで時間がかかっていた。
路上駐車したシティローラーが撤去されぬよう願いながら向かうのはシェルターだ。
クラリーベルとの
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