第一章 【Re:Start】
第五話
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レギオスに住む住人たちにとってその大小を問わねば都震というのは日常だ。
何せ自分たちが住んでいるのは足の生えた円盤状の大地。その足を動かし世界を動き回っているのだ。
足が「歩く」度にその揺れは都市に伝わるのは当然だろう。
足元がいつも平坦とは限らない。小さな山を登り、傾斜を下り、泥濘んだ地盤に足を取られれば普段よりも大きな揺れが都市を襲う。
その揺れを感じる度、中心部の人間たちは忘れかけていたことを何度となく思い出す。
この世界で定住は許されず、自分たちが足を置き住む大地は動いているのだと。
だからこそ揺れが都市を襲った時、ツェルニの住人たちは最初気がつかなかった。
稀にだがよくあるという、矛盾しているがそうとしか言いようの出来事。それだろうと慣れた心で思った。
家の棚は平気か、事故が起きなければいいな、どこか壊れただろうか。
浮かんだのはその程度の心配だ。
だから、その揺れが何度となく体に馴染んだ「日常」の揺れではないと気づいたのは極少数。その揺れをかつて「日常」として体に刻み込まれてきた者たちと、些細な違和感を違和感として認識できた者たちだけ。
後者である一部技術者は都市機関部の損傷を危惧し、都市の統治者は原因究明をも含めた現状把握を行おうとした。
その時点ではまだ危機感ですらない違和感の確認作業であり、夕刻であったことを踏まえ連絡のついた少数の念威操者の助力も得て探査を始めた。
機関部の点検から始まり、続いて端子は原因究明のため都市外に飛ばされた。
内部の損傷が皆無である報告がまず届き、そしてその一報は少しの間を置いて告げられた。
確認されたのは地中にいる夥しいほどの生命反応とその蠢き。
そしてそれが自分たちへと向かっていること。
荒野の覇者、汚染獣。
ツェルニは地中にあったそれらの巣を踏み抜いていた。
夕闇の街に警報が鳴り響いていた。
人に警戒感を与える不快さを秘めたその音は汚染獣の襲来を告げる合図だ。年に一、二度訓練で鳴り響くそれは訓練では無い事を告げるアナウンスと共に都市民に届けられた。
カリアンは生徒会棟地下の会議室にいた。報告が届けられて直ぐにこの部屋は臨時の司令室となっていた。
部屋には関係する各科の長が集まり、念威操者が操る端子が情報を伝えてくる。
「現在の状況は」
『汚染獣は現在、都市の第六脚部を登っています。半刻ほどで外縁部へと到達すると思われます』
感情が外に出づらい念威操者といえど、はっきりと分かる不安を滲ませた声で状況が伝えられる。
「相手の数とこちらの布陣は」
『未だ地中にいる分も含め現在把握しているだけで千強。全員ではありません
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