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無欠の刃
アカデミー編
女の子
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トに押しつけたという、そんな勝手な罪悪感を感じているからだろうし、それ以上に弱い自分を嫌っているからだろう。
 ナルトを守ることができない、弱い自分を、ナルトを守るために不必要なものを持っている自分を、心底嫌っているのだろう。

 今日だって無理矢理出席していたが、一カ月に一回は必ず訪れるこの日には、絶対に無条件で体調が悪くなる。
 チャクラコントロールがうまくいかなくなって、そのせいでカトナは普段は見過ごせるものが見過ごせなくなってしまう。見逃せるものも見逃せなくなって、不用意に傷口に触れて、痛がってしまう。
 だから、今日は行くなと言ったのに。
 逆にそれが引き金となって、カトナは余計にむきになってみすみす行かせてしまった。

 己の判断ミスを腹立たしく思いながら、サスケはカトナの頭を撫でた。
 すーすーと、一定のリズムで刻まれる呼吸は安心している証拠。
 もしも、ここに日向ネジがいたらならば、そんな風に寝息は立てなかったはずだ。
 そのことに少しの優越感を覚える。カトナは自分以外を信用しないのだと安堵して。そしてだからこそ絶望する。
 カトナにとってサスケは警戒するべき男ではないのだ。どこまでいってもカトナはサスケを共犯者としかみなさない。

 何もかもむなしくなって、サスケはカトナの額に自らの額を合わせた。
 こつんと音が鳴る。
 間近に迫った顔に、少女は気づかない。気づけない。
 あの日に大切なものはもういらないと、たくさん抱えていたら取り落としてしまうからと、何もかも捨ててしまった少女は、すべてに鈍くなってしまった。
 けれど、それでも。
 心にぽっかりと空いた穴に手を当てる。そこはもう二度と埋まらないけれど、それでいい。

「…俺が、守る……」

 ずっと、ずっと。
 あの日、君の手が真っ赤に染まったあの瞬間から、そう、決めた。
 たとえどれだけ、この思いが踏みにじられても。
 たとえどれだけ、この思いがお前には届かなくとも。
 その手が、その指が、自分を拒むのだとしても。
 それでもあの日、守ると決めた。そばにいると、決してその手を離さないと、この心に刻みつけた。

 サスケの瞳が夕焼け色のように赤く染まっていく。
 目の前の少女の瞳をそのまま映しこんだかのように赤く、紅く、美しいほど澄んだ朱に染まって。
 やがて、三つの勾玉が赤い海に浮かぶ。

「どんな手を使っても、どんなにこの手を汚そうと……」

 他の誰にも触れさせない。ほかの誰にも知らせない。
 この思いは、この心は、すべて目の前の少女のもの。
 あの日に彼女が壊れてから、彼もまた、同じように壊れてしまった。
 その思いは底なし沼のように深く、どこまでも限りなく、奥が見えず。そして、どこまでも、暗い。


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