派遣社員になった訳だが……どうしよう
18話
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あれから数日経った。
我ながら随分と女々しいと思えるが、どうにも体を動かそうとすら思えない。体に何か異常がある訳じゃないんだが、動かそうという意欲が湧かないんだ。
正直、今は何もかもがどうでもいい。
そんな俺の心を反映したかのように、背中のマントは端々がボロボロに、手足の具足は輝きを失いまるで炭のように鳴っている。
死ぬ、というつもりは無いが、この疲れは当分癒えそうにないな。動けるようになるのが先か、飢えて死ぬのが先か……ふっ、後者だったら存外あっさりと受け入れてしまいそうだな?
ああ、強いて言うならカナメ達が心残りだな。まぁ、サカキがどうにかしてくれるだろ……
今はただ眠りたい。
しばらくは何もかも忘れて眠らせてくれ。
「ダメだよ」
不意に誰かから声をかけられた。
「ほっといてくれ、俺は疲れてるんだよ」
「困るんだよ、君がそんなんじゃ。折角人の言葉まで覚えて、長い間君を追いかけてきたのにそんなんじゃ、さ」
俺を追いかける?
その言葉に疑問を感じた俺は、目の前に立っている声の主を見上げる。
そこには陶器のような白い肌に、太陽のような明るい色の赤のワンピースを着た女が立っていた。女は真っ黒の長い長髪で顔の右半分を隠しているが、俺は素直に女が美しいと感じた。
俺が女を見ていると、女はゆっくりと両手で俺の顔を包むようにして視線を強引に合わせ、じっと俺を見つめる。
こいつは一体誰なんだ?
いや、人じゃない、こいつはアラガミだ。
それだけは身体中のオラクル細胞が主張しているのだが、何故かこの女に対して敵意…いや、喰おうという気が起きない。
こいつが人型だからとかそういう理湯じゃない、食欲そのものが湧かないんだ。
「アハッ、少しは戻ったね」
女は酷く楽しそうな笑みを浮かべて、更に顔を近付ける。
そもそも、こいつは一体何の為の俺を追いかけて来たんだ?フェンリルから追われるというのならば分かる、俺はフェンリルにとって正体こそ分からないが手中に収めたい存在だからな。
だが、アラガミに追われるだと?
「そうそう、その眼だよ。その眼が見たくてここまで来たんだよ」
その段階でこのままではぶつかるじゃないかとようやく気付いたんだが、女は更に顔を近付ける。
おい、ちょっ!?
「チュッ」
思わず、女を突き放して体中のオラクル細胞を活動させる。確かに飢えて死んでもいいと思ったが、喰われて死ぬのだけはごめんだ。
さっきのは毒か何かを流し込まれたのか?体中のオラクル細胞を簡単にだが探る。
何の問題もない……じゃあ、何だったんだ?
女を見ると口元に指を当てて、一人で何か呟いている。
「人間の親愛を示す行動だって調べたんだけど、何か間違ったかな?」
こいつ、何を言っているんだ。親愛だと?
「そう、親愛だよ」
ちょっと待て、こいつ
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