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クズノハ提督録
外伝『鋼鉄の脈動』第一話
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深い深い碧色の中、『それ』は静かに眠っていた。全ての役目を終えて。必要とされることも無くなって。ただただ深く眠っていた。
人々は、その眠れる姿を一目見ようと様々な場所より訪れた。その姿に触れる者、その歴史を偲ぶ者、その風格に見とれる者、訪れた人間もまた様々であった。
生ある者達に触れ続け、空っぽだった存在に何かが満ちていった。深く眠っていた筈の『それ』はやがて意識を手に入れた。 自分はここにいる、確かにここにいる。それは生ある者ならば当然の自覚ーーしかし『それ』にとっては異常なものでしかなかった。
自らの存在を意識するにつれ、いつしかそこに自我が芽生えた。自分はここにいる、それをより強く感じたいが為に。薄暗く冷たい世界の中、時折訪れていた温かい気配。次第にその温もりを自ら求めるようになっていった。






いつしか気が付くと、世界が全く変わっていた。碧色で変わることのなかった景色はそこにはなく、暗い闇を月と水面が照らし仄かに輝く世界があった。目前に広がる水面には一人の少女の姿、辺りには獣一匹たりとも気配も無い。
「え……ぁ……」
驚き、戸惑い、呻くような声が漏れる。何が起こっているのだろう。
何故、今まで動くことのなかった体が動くのか? 何故、言葉を発することが出来るのか? 何故、自分は人の形を取っているのか?
服も何故か着ているもののそれでも尚肌寒い。冷たい風が吹き、身を震わせる。今までには無い感覚。これではまるで人間だ。自分は人間ではなかった筈。では何だ?

ーー船だ。軍艦だ。

「ぐん……かん……?」
自然と口に出た言葉、不思議と懐かしく感じた。あれからどれだけの年月が経ったのか、自分がどこにいるのか、全く分からない。しかし、一つだけ確たるものがある。芽生えたばかりの心と身体に、一つだけ刻み込まれていた記憶。自分が最も輝いていたあの頃。

「私の名は響。栄えある大日本帝国海軍の船、特V型駆逐艦二番艦」

その時、ふと脳裏をよぎる。自分の姉妹のこと。共に過ごし共に戦った暁、雷、電の三隻。そして、沈む時もまた自らも含めて四隻共に沈むと思っていた。

「……っ」

思い出した途端、胸が裂けそうになる。前の姿ではまずあり得なかった痛み。そもそも今まで痛みというものを知らなかった彼女には酷く耐え難いものであった。
終戦時、特V型駆逐艦姉妹四隻のうち響だけが生き残っていた。姉妹を三隻……最後の艦、電に至ってはほぼ目の前で沈み喪った。その頃は心も何も無かったであろうが、今は果たしてどうだろうか。心ある者が感じるであろうその悲しさを。



苦しみに耐える内、ふと気付く。自分も
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