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SAO−銀ノ月−
第六十七話
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広がった光景に言葉を失った。

「なっ……?」

 死神のようなポンチョ姿をした《奴》――その姿をした幻影が《蝶の谷》へと向かう出口側の洞窟を、足の踏み場が無いほどに埋め尽くしていた。向こうには数え切れない数の死神が、ニヤニヤと笑いながら手招きしているようだった。

「ナイスな……いや、まだ言うタイミングじゃないか……」

 そう言って半ば無理やり口の端をニヤリと上げると、日本刀《銀ノ月》の柄を片手に握り締めながらも、《奴》まみれになった橋の向こうへと走っていく。近くにいた《奴》の幻影に接触するものの、幻影はたかが幻影……実体を保たない物に接触しようが何もない。気味は悪いが。

 そしてあの『亡霊』の狙いは、この《奴》の幻影の攻撃の幾つかに本物の一撃を混ぜるということ。右から左から来る幻影の包丁の中で、どれが『亡霊』の一撃かを見破るのは困難である上に、『亡霊』はやはり姿を消している。当てずっぽうにカウンターを狙ったとしても、『亡霊』の一撃は《奴》の攻撃に交じっているとは限らず、違う場所から見えない一撃を叩き込んでくる可能性もある。

「シャァァ……」

 俺を中心に取り囲む《奴》の幻影から、どことなく俺を嘲笑しているような『亡霊』の息づかいが聞こえてくる。息や声の方向から位置を掴む、という手段は使えないらしい。気配や感覚を読むことは得意分野だが、それも《奴》の幻影にしか気配を感じず、肝心の『亡霊』の気配を感じることは出来なかった。

 片腕に包丁をブラブラと持ちながら、実体を持たない《奴》の幻影たちが俺をジリジリと取り囲んでいく。そして俺が、日本刀《銀ノ月》を本来の持ち方ではなく銃のように持ち替えたと同時に、一瞬だけ力を込めた息づかいがあった後に、《奴》の幻影たちが一斉に俺に対して殺到した。数え切れない数の実体がない包丁たちと、一本の『亡霊』の一撃が。

「――そこだ!」

 日本刀《銀ノ月》の柄に新たに付けられた引き金を引くとともに、《銀ノ月》が構えられていた右の方向に高速で刀身が発射される。レプラコーンの職人に追加されたその機構は、《奴》の幻影を打ち消しながら忠実にその役目を遂行し、狙い通りに『亡霊』に直撃する。

「ガハァ……!?」

 《奴》の幻影たちから『亡霊』の驚愕したようなニュアンスが混じった、吐血したような音が漏れ出した。俺に殺到していた包丁の攻撃を全て無視して、俺は日本刀《銀ノ月》を発射した方向に向け駆け出すと、進行方向にいた《奴》の幻影たちを切り裂きながら――魔法は中心のポイントを斬れば破壊できる――ある狙ったポイントに向かうと、やはり何も見えない場所に日本刀《銀ノ月》を突き刺した。

 ……感触とともに手応えあり。『亡霊』に突き刺さっている筈の日本刀《銀ノ月》を、そのまま切り裂くように
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