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SAO−銀ノ月−
第六十七話
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長時間姿を隠すことが出来るそのMP。どちらにしろ俺には門外漢な話だが、そんな俺にだろうと真っ当な手段でないことは分かる。実際の痛みを体感するという、《ペイン・アブソーバー》というものも併せ、改造か改竄のようなことをしたのだろうか。

 ――だが、そんなことを考えるのは後で良い。今は目の前にいるこの『亡霊』を倒す、ということだけを考えていれば良い話だ。

「キヒュー……カハァ、カハッ……」

 仮面の裏からの化物のような吐息が整っていき、『亡霊』がこちらを睥睨する。PoHの演技をしていないと喋ることも出来ないのか、ヒューヒューと息を乱すことしか『亡霊』はしなかった。その奇妙な身体と断続的に響く息づかいは、もはや妖精などというものではない。

「……まあ、お前が何者だろうと関係ない。そこを退いてもらえればな……!」

 ポケットからまたもやクナイを取り出しながら、出来るだけ早くある言葉を唱えていく――魔法の言葉を。この世界の住人たる妖精にのみ許された、本来あり得ることのない事象を引き起こす呪文である。俺の種族は風妖精……その魔法によって引き起こされる事象は風だ。

 先程ようやく使い始めた俺に、レコンや目の前の『亡霊』のようにそう大した魔法は望むべくもない。風妖精として最初に習得できた、『風を起こす』という程度のものだ。当然今唱えた魔法もその魔法であり、俺の背後から、本来この洞窟ではあり得ない風の通り道が流れていく。

 このままでは攻撃にすらならない、ただの強力な扇風機にしか過ぎない。だが、その風の通り道に従うようにしてクナイを放つと、クナイが目にも止まらぬ速さで発射され、『亡霊』に対して襲いかかった。先の数回突き刺さっていたクナイは、『亡霊』がその高速のクナイに反応できずに直撃していた証だ。

「グゥゥ……ッ……!」

 またもクナイが胴体に直撃した『亡霊』に対して走り寄り、痛みでうずくまっていたその頭に回し蹴りを炸裂させる。そのまま橋から川に落ちそうだった『亡霊』は、何とかその長い腕でガリガリと橋を削るように自らの身体を抑えつけ、回し蹴りの衝撃を吸収する。

 『亡霊』は一瞬だけ四つん這いになって、すぐさま洞窟の壁面に向かって蜘蛛のように四つ足で飛び込んで後退すると、俺は逃げていった奴を追撃するべく日本刀《銀ノ月》を抜きはなった。

 対する『亡霊』も手に持っていたレイピアをだらんと力を込めていないように構え、仮面の下からブツブツと言葉になっていない単語が聞こえてきたと思えば、その姿が消えていく。それと共に、『亡霊』の周囲に《奴》の――PoHの姿がこの世界に現出していく。先程まで俺のことをボコボコにした戦術を、再び行うのだと考えた俺は、今度はもうあんな無様な醜態を晒しはしない――と、抜きはなった日本刀を構えたが、目の前に
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