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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
25.神意の妹
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単純な攻撃力では、そこらの魔術師など比較にならない。人の身でありながら魔族を超えた怪物なのだ。
「うおおおおおっ!」
老人が再び、吼え、灼熱の熱線がこちらへと襲いかかる。
そのときには、もはや浅葱に避ける術はなかった。
せめてサナの命だけは守らねばと身体はとっさにサナを覆うように動いた。
だが、灼熱の熱線が浅葱を襲うことはなかった。
なにが起きたのかわからなかったが、サナを覆っていた身体を起こすと浅葱たちを守るように立つ一人の少女の姿があった。
「大丈夫ですか、浅葱さん」
普通の顔で唯は浅葱たちの安否を確認する。
浅葱は驚きで頭が働かない。
友人の妹が精霊遣いの攻撃を止めた。
──しかも無傷で。
「貴様はなにものだ? 儂の精霊を素手で止めるとは」
「あたし? あたしはどこにでもいる普通の中学生だけど」
皮肉を込めたように唯は答えた。それは彩斗の癖だった。自分を名乗るときに遠回しに言って、相手を困らせるという。
浅葱も初めてあったときに少し困ったことを思い出した。
「浅葱さん、走るよ!」
その声に浅葱は、サナの手を引いて走り出す。
浅葱はもう一台のスマートフォンを取り出して、全力で走りながらマイクに怒鳴る。
「──モグワイ!」
『聞こえてるぜ、嬢ちゃん』
耳元から流れ出したのは、皮肉っぽい響きの合成音声だ。浅葱の“相棒”──人工知能のモグワイだ。
「状況は!?」
『全部わかってる。その爺さんの名はキリガ・ギリカ。効率良く人を殺すために、自分の体内に
炎精霊
(
イフリート
)
を植え込んだ化け物だ。六年前に、絃神島でテロを起こそうとしたところを逮捕されて、監獄結界に送られた』
「監獄結界!? あれって都市伝説じゃなかったの?」
浅葱は唖然としながら訊き返す。
老人の足はそれほど速くなかった。
だが、老人は、邪魔な障害物を全て燃やし尽くしながら、最短距離を真っ直ぐ追ってくる。
「くっ……モグワイ、ルート計算! 地下共同溝からキーストーンゲートのEエントランスに向かうわ。隔壁コントロールを!」
『Eエントランスか──了解だぜ。次の角を曲がって右だ。地下街に降りる階段の踊り場に、共同溝のハッチがある』
浅葱はサナの小さな身体を抱きかかえて階段を駆け下り、すぐ目当てのハッチを見つけた。水道管のメンテナンスのための、作業用のトンネルだ。
鍵はすでにモグワイが解除している。ハッチを蹴って、薄暗い共同溝へと飛び込んだ。
直径二メートルくらいの狭いトンネルを走る。
キリガ・ギリカもすでに共同溝に入っていた。
そんな老人と浅葱たちを隔てるように、天井から分厚いシャッターが降りてくる。
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