暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
25.神意の妹
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(助けて……彩斗、古城)

「ヴァトラ────ッ!」

 その願いに応えるように彼女のよく知る少年の声が聞こえた。
 その瞬間、夜空を満たしていた濃密な妖気が消滅した。
 降りそそぐ月光が照らし出したのは、自転車に跨る暁古城と、その後方に乗っている緒河彩斗だった。




 抉れた路面。ビルの外壁はひび割れ、付近の信号や街灯は傾いている。
 特区警備隊(アイランド・ガード)の主力部隊は壊滅状態。そして面積の異様に少ない服を着た女が、半死の状態で倒れている。
 こんな状況で浅葱と、彼女が抱いている那月と思われる少女と、唯たちが誰も死ななかったのは、認めたくはないがこの状況で平然と笑っている青年吸血鬼のおかげだ。

「やあ、古城、彩斗」

 ヴァトラーが汗だくの古城を眺めて、場違いなほどの笑顔で呼びかけてくる。

「呑気に挨拶してる場合か! やり過ぎだ、オマエ!」

 そうかなァ、とヴァトラーが不服そうに首を傾げる。
 彼の足元に倒れる女は監獄結界の脱獄囚だ。
 傷ついた脱獄囚の女の左腕で、鉛色の手枷が発光する。
 そこから吐き出された銀色の鎖に搦め捕られて、彼女の姿は虚空へと消えた。どうやら監獄結界に戻されたらしい。

「へえ……監獄結界のシステムが動いているのか。キミたちのおかげでなかなか面白いものが見られたよ、古城、彩斗。やはりこの島は退屈しない」

「勝手に喜んでろ……!」

「お前は一回死んでこい……そして目覚めるな」

 呆れた顔でそう吐き捨てて、彩斗たちは浅葱のほうへと駆け寄った。

「遅いわよ、彩斗、古城」

「……悪い」

 浅葱らしい第一声に、少し安堵する。彼女の手を握って、立ち上がるのを手伝ってやる。
 彩斗は浅葱を立ち上がるのに協力するとすぐに壁際に座り込む人工生命体(ホムンクルス)の少女と、妹の元へと駆け寄る。

「大丈夫か、唯、アスタルテ?」

 アスタルテはぎこちなく振り返って、弱々しく答える。

「肯定。ただし戦闘続行は不可能。休息と再調整が必要です」

「わかった。あとは俺たちに任せろ」

 唯もいつもの無邪気な口調ではなく弱々しい声で答える。

「なんで彩斗くんがここにいるの? というかなんでそんなボロボロなの?」

 聞かれたくないこと聞かれ、回答に困り、空を仰ぐ。

「まぁ、いいや。とりあえず、来てくれて嬉しいよ、彩斗くん」

 ぎこちなくはあったがこちらに微笑む唯に少し、申し訳ない気分になる。彩斗がもっと早くここに到着していれば、唯がこんな目に合うことはなっかた。
 それでも彩斗にはまだやるべきことがある。そのためにはいまは唯をこれ以上この事件に巻き込むわけにはいかない。

「ゴメン
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