第二章
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尋ねるとすぐに答えが返ってきた。
「ここで間違いありません」
「そうですか」
やはりよくわからなかった。どうしてこのような場所がワインを飲むのに最適なのか。からかわれているのではないか、とも思った。だがどうやら違うようである。
「まずはこれをどうぞ」
そう言って手に持っていた大きな鞄から何かを取り出した。箱、そして紙に覆って大事そうになおしてあった。それはガラスのグラスであった。
「ワインを飲む為のものですね」
「はい」
彼女はまた答えた。
「これで飲んで下さい。絶対にです」
「何故ですか」
「ここが砂漠だからです」
彼女はそう言った。そして車から椅子を取り出した。二つある。僕達はその椅子にそれぞれ向かい合って座った。彼女はそして僕にまた言った。
「それではワインを出しますね」
「はい」
鞄からワインを取り出してきた。赤いワインであった。
「赤、ですか」
「ここで飲むのは赤しかありませんから」
「そうなのですか」
「はい」
やはりどうしてもわからなかった。僕にはそれが何故かやはりわからなかった。
「どうぞ」
ガイドさんは僕のグラスにワインを注ぎ込んできた。そして僕はそれを受けた。手馴れた手つきであった。
赤い液体がグラスに注がれる。僕はそれを受けながらワインを見た。赤い世界がその向こうに映っていた。砂も空も何もかもが赤かった。
僕のグラスに注ぎ終えると自分のグラスに注ぎいれた。そして二つのグラスがこの深紅の世界に覆われた。僕達はその深紅の世界を打ちつけあった。
「では乾杯」
「はい」
僕はガイドさんに言われるままグラスを合わせた。そしてそのワインを飲んだ。砂漠の焼け付くような日差しの中それを口に入れた。
「おや」
僕はそれを一口飲んだところで思わず声をあげた。それはレストランで飲むよりもずっと美味しく感じられたからだ。
「美味しいでしょう?」
「はい」
僕は答えた。グラスの向こうにいるガイドさんはにこやかに笑っていた。赤い世界にその笑みが映っている。少し不思議な世界であった。僕はその世界から彼女を見ていたのだ。
「ここはね、特別な場所なんですよ。ワインを飲むにあたって」
「どうしてでしょうか」
ちにかくそれがわからなかった。問わずにはいられなかった。そして僕は問うた。
「漢詩は御存知ですか」
「漢詩!?」
「はい。多分学校の授業で習ったと思いますが」
「ええ、それなら」
特に唐代の詩は覚えている。杜甫や李白の詩は暗記させられた程であった。記憶関係の授業は得意だったので漢詩のテストもよかったと記憶している。得意科目と言ってもよかった。
「確か絶句とかそうしたものでしたよね」
「はい。その絶句で王翰の詩なのですが。涼州の詩を御存知でしょうか」
「涼
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