第二章
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か」
僕は考えながらそう答えた。
「実際に食べたことはありませんが」
「そうですか」
「はい。まあ食べたことがないのでどうだったかは言えないです。すいません」
「いえ」
そして今度はお茶に話を移すことにした。
「お茶ですけれど」
「中国のお茶は日本のものとは全然違いますからね」
「ですね。種類は多いですがポピュラーなものに限っても。間違ってもお米にかけて食べるようなものではないです」
「はい」
「我が国では茶粥なんかもありますけれどね」
「お粥にお茶を入れるのですか」
「お茶で味つけをしたものです。奈良名物です」
「奈良・・・・・・。ああ、日本の古都の一つですね」
「行かれたことはありますか?」
「一度だけ」
答えながら不機嫌な顔になった。
「あの鹿には参りました」
「ははは」
それを聞いて笑わずにはいられなかった。
「あの鹿は酷いでしょう」
「はい」
思い出したらしい。憮然とした顔になった。
「何故あんなに図々しいのですか。しかも食べ物に卑しいですし」
「甘やかしたせいでしょうね」
僕は率直にそう答えた。
「甘やかした」
「はい。あの鹿は神様の使いとされているのですよ」
春日大社の神獣だ。昔は奈良の鹿を殺すと死刑だった。今でも罰金をとられる。甚だ理不尽な法律ではある。
「それで大切にされているのですね」
「奈良の人には嫌われていますけれどね」
「でしょうね」
納得してくれたようであった。
「見ていたらからかった人にやり返すし子供のお弁当は取るしお菓子でも何でも勝手に食べるし。どうにかならないのですか」
「どうにもならないでしょうね」
どうしようもない。そう答えるしかなかった。
「ですからあれは相手にしない方が身の為ですよ。蛇頭と同じですから」
「その通りですね。今度からは相手にしません」
「そうそう」
そうするべきだ。我ながらいいことを言った。
「それでお茶ですけれど」
「はい」
話をお茶に戻した。僕達はそんな食べ物や飲み物の話をしながら蘭州に向かうのであった。一日たっぷり電車に揺られた後で到着した。疲れてはいたが食べ物の話をしていたので気分はよかった。
その日は現地のホテルに泊まった。部屋は別々だ。そしてそこから車で砂漠に向かうことになった。
車でどれだけ行っただろう。ようやく砂漠に着いた。車から降りるとガイドさんは僕に対して声をかけてきた。
「ここです」
「ここですか」
「はい」
彼女は答えた。
「ここがワインを飲むのには一番いい場所です」
「はあ」
見れば何処もかしこも砂ばかりである。何故ここが一番いい場所なのかよくわからなかった。正直ガイドさんの言っていることがわからなかった。
「ここがなんですね」
「はい」
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