第二章
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日本人なら誰でも知っていますけれど。食べたことはありませんか」
「聞くのもはじめてです」
「そうですか」
これは正直意外であった。僕はそれを受けて彼女に説明した。
「お茶漬けというのはですね」
「はい」
「冷えた御飯に熱いお茶をかけて食べるものなのですよ。具と一緒に」
「具とですか」
「それは梅干だったり漬物だったり。海苔も使いますね」
「そうなのですか」
「本当に見たことありませんか?」
「ええと」
そう言われて考え込んだ。
「そういえば何処かでそれを見たことがあるような」
「よく居酒屋で最後に食べたりするんですけれどね」
「最後に、ですか」
「まあ気付かない場合もありますね。それは仕方ないです」
「はあ。ところで一つ気付いたのですけれど」
「はい」
「そのお茶は日本のお茶ですよね」
「勿論です」
それにすぐに答えた。
「それが何か」
「いえ。中国のお茶ではそれはできないかな、と思いまして」
「そうですね」
僕はそれを聞いて考えた。
「無理だと思いますよ、多分」
「無理ですか」
「はい。中国のお茶はまた日本のお茶と味が違いますからね。それに米も違います」
「米」
「あっ」
僕はそれを言って自分で気付いた。
「そう、米です」
「米に何かあるのですか?」
「その、冷えた御飯のことですよ」
「さっきのお話の続きになりますね」
「ですね。ほら、日本のお米と中国のお米は違うじゃないですか」
日本の米は言わずと知れたジャポニカ米である。中国はタイやインドのものと同じインディカ米である。前者は粘りが強く後者はあっさりとしている。これに違いがあるのだ。
「それで冷えた御飯が食べられないのですね。成程」
「何か秘密があるみたいですね」
ガイドさんも興味津々なようであった。
「ええ。中国のお米は日本のものに比べて粘りがありません」
「それはわかります。私も日本でそれを実感しました」
「そうでしょう。日本の米は粘りがありますからある程度冷えても食べられるのです」
「中国ではすぐに炒飯にします」
「そうですね。あの米はそれによく合っています」
「そうでしょう」
それを聞いて得意気に笑った。
「炒飯はあれでも難しいのですよ。お米も選ばないと」
「では日本の炒飯は」
「まずまずですね」
「これは手厳しい」
どうやらこのガイドさんは炒飯には一家言あるようである。
「炒飯については一本取られたようですね」
「お米の差というものです」
「そう、お米ですね」
話が都合よく戻った。
「それでお米がそんなふうですからお茶をかけても食べられるのです」
「日本のお米以外でやったらどうなりますか」
「多分サラサラになり過ぎてあまり美味しくはならないのではないでしょう
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