第二章
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二人で食べようと思って持って来たのですから」
「あ、有り難うございます」
それを聞いて礼を言わずにはいられなかった。
「気を使って頂いて」
「これも仕事ですから」
そう言ってにこりと笑った。
「どうぞ。遠慮なさらずに」
「はい」
薦められるままそれを手にとり食べる。食べてみると美味かった。パンや饅頭とはまた違う味だ。
「これも美味しいでしょ」
「そうですね」
どうも相槌ばかり打っているような気になった。
「けれど本当に美味しいです」
「中国は北の方ではあまり米は食べないのです。採れませんから」
「そうらしいですね」
それは聞いてはいる。今は少し変わってきているらしいが。大体南北で綺麗に分かれるらしい。これも聞いていると面白い話であった。日本とはまた違う。
「ですから麦を食べるんです。そこはヨーロッパと同じですね」
「ですね」
「上海ではお米が主食ですからね。私も最初見た時はびっくりしました。話には聞いていましたが」
「同じ中国の人でも驚くものですか」
「そうですよ。だってお米がありませんから。日本の人が冷えた御飯を食べるのも信じれませんけれど」
「冷えた御飯?」
それを聞いて動きを止めた。一体何のことだろうかと思った。
「それは何のことですか」
「ほら、あるじゃないですか」
彼女は持っている餅を食べ終えると手振りを交えて話をはじめた。
「御飯を握って丸めて。あれを見た時は何で冷えた御飯を美味しそうに食べているんだって思いましたよ」
「ああ、あれですか」
それを聞いて納得した。
「あれはおにぎりですよ」
「おにぎり」
「はい。日本人の好物の一つでして。ああしたら食べ易くて美味しいのですよ」
「そうなんですか」
「海苔を巻いてね。食べたことはありませんか?」
「まさか」
慌てて首を横に振った。
「冷えた御飯なんて食べられないですよ。とても」
「食べられませんか」
「いえ、日本人は食べられるのですか?」
「ええ」
訳がわからないが頷いた。
「お握りは僕も好きですよ」
「はあ」
どうも彼女はそれが理解できないようであった。
「どうも私はあれが苦手でして」
「苦手」
「中国では冷えた御飯は食べないのですよ。間違っても人には出しません」
「じゃあお茶漬けなんかは」
「?何ですか、それ」
彼女はそれを聞いてキョトンとした。
「聞いたことのない料理ですが」
「あれ、知りませんか?」
それを聞いて逆にこちらが驚かされた。
「ほら、居酒屋なんかによくある」
「居酒屋なら行ったことがありますけれど」
「じゃあそこで食べるのを見たことはありませんか?」
「肴ではなく」
「ええ。何ですか、日本の料理ですよね」
「はい」
それに答えた。
「
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