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【短編集】現実だってファンタジー
Mission・In・賽の河原 前編
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に悪化して苦しむことになり、これが治るのは苦しみに苦しみ抜いた末に懺悔して地蔵に救われるまで続く。前に一人この区画でもうっかり崩した子供がいたが、それはもう見ているこちらが苦しくなるほどに苦しんでいた。
ある意味積石以外で確実に救われる方法だが、残念なことに痛いのが大嫌いな平成っ子にそれを試す気概は存在しなかった。

鬼にはその苦しみを特別の方法があるようだが、三途の川を流れる資料に「祟り祓い請求書」なる請求書があり、かなり0の多い数値が書かれていたことから、鬼にとってもただ事では済まないものなのだろう。
それはさておき、話は続く。

「次だ。『鬼は決して道を戻らない』。鬼が通り過ぎた直後にいくら石を積もうとも、鬼が戻ってきてそれを邪魔することはない。次の鬼が来るまでは必ず半刻の猶予がある訳だ。これもいいか?」
「うんうん。後ろから石投げつけても振り返りもしなかったからね」
「きっと鬼の習性なんだ。黄泉比良坂のお話みたいなものかな?」

鬼には意思や感情がある。悪口を言えば顔を顰めるし、時折見回りが面倒だとぼやいているから、当然に意思がある。しかし、自分の後ろで起きたことだけは全くなかったことのように扱い、決して後ろで起きたことに興味を持つことはない。

「鬼がいつも半刻でここを通るのも、後ろを振り向かないから余計なロスが無いんだろうな」
「良い指摘だ。そこも重要だ。『鬼は時間に忠実』だ。どんな個体も必ず半刻で積石を崩し、区画を後にする・・・・・・但し、例外はある。崩すのを優先するか時間を優先するか・・・今回はそこを突く」
「おおー!なんか盛り上がって来たね!」
「ミッションだミッション!」
「何だかこういうのってわくわくするね!」

周囲の意見が飛び交う中、またしても重要な点が挙げられて、リーダー格の少年がニヒルに笑う。漸く作戦会議っぽくなってきてテンションの上がる子供たち。向こうの鬼は一度に一人しか来ないが、こちらの士気は非常に高いと言えるだろう。

時計を見る係に目くばせすると、まだまだ時間があるという事だった。最悪、計画説明を中断して2回に分けようかとも思っていたが、間に合いそうだ。そう考えたリーダー格の少年は、この作戦の最重要にして最も反発を買うであろう部分を、早めに言ってしまう事にした。

―――これは、計画を練り始めた当初、全く予想だにしていなかった情報が彼の元に転がり込んできたが故の判断だ。彼を攻めるのは酷だが、少年は攻められるのを覚悟できっぱり宣言した。


「・・・・・・但し、この作戦は説明後すぐに実行する!」


その瞬間、全員が息を呑んだ。リーダー少年もそれは予測できていた事だ。恐らく式に関わるだろうという事は。それでも、これは欠かすわけにはいかなかった。やがて、これまた想定範囲
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