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【短編集】現実だってファンタジー
Mission・In・賽の河原 前編
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て所か?」
「ねえ、時間足りる?」
「十分だ。これより『バベル作戦』の概要説明に入る」

集合した子供たちは、また地蔵菩薩と鬼を困らせる大問題を起こそうとしていた。
いや、正確には違う。今まで散発的に様々な悪だくみを実行してきたが、今回のそれは悪だくみの範囲に収まらない最大規模の作戦。今まで行ったあらゆるいたずらや問題は、そのための布石に過ぎなかったのだ。

周囲数百人の子供たちが一斉に顔を合わせる。賽の河原は一定の幅で区切られており、区画ごとに数百人の子供が入れられ、供養を強要される。それが延々と続いている構造らしく、区切られた先は鬼の関所を通らなければ辿り着けない。つまり、この場にいる子供は彼らのいる『”ゐ”の九十九区画』のほぼ全員が参加していると言っても過言ではない。

念に念を入れて、鬼の気付かれない時間帯だけ少しずつ協力を呼びかけ、実に3年の歳月を費やして全員を計画に引きこんだ。この河原で鬼に加担して得することなど何一つないので、新入りも含め全員がこの一大計画の共犯者だ。この場にいないメンツは全員が鬼対策の斥候であり、予想外の事態が起きると一目散に皆に伝える係となっている。

「待ってました!これで湿っぽい川から脱出できるぜ!」
「あのアホ鬼たちに積み上げた塔を崩される光景も、今日で見納めにしてやるわ!!」
「だいたい、僕ってば育児放棄されて死んだのに何で僕が供養するのさ!ここのシステムおかしいよ!!」
「死にたくて死んだんじゃないのに・・・ひどいわ!」

口々にこの三途の川や鬼への不満が噴出する。皆、数年前までは遊び呆けていたが、地蔵の宣言で労働を余儀なくされた者ばかりだ。三途の川のシステムは非常に保守的で、この数千年の間、ほとんど組織やシステムの見直しがされたことが無いらしい。鬼が処分に困って川に捨てた断片的な資料やごみからそういった事情は把握できていた。

なお、流されてきている資料は恐らく上司に回すより前に握りつぶされたものである。本来なら三途の川には亡者の手が数多にあり、入るとあっという間に亡者によって水中に引きずり込まれる。だからこそ書類はそこに流せば他者の目に入ることはない。それを、水切りをしていた連中の投石でちょっとずつ足場を作って拾えるように埋め立てて簡易堤防を作った。だから書類を全てではないにしろ拾えている。

なお、鬼は当然その足場を快く思わないが、連中は図体が3メートル近くあるので子供用の足場には踏み込めない。うっかり近づいて石が崩れると自分も水中に引きずり込まれる。それほど小さな足場だからこそ、鬼は逆に手が出せないという訳だ。資料を拾っていることも、恐らくは知らないだろう。

「だがシステムが古いのならば、それを利用しない手はない。そう思わないか?」

そう言って、リーダー格
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