派遣社員になった訳だが……どうしよう
12話
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越し祝いにピロシキを持ってきてくれたようだ。ロシアにもこういった風習があるのか、それともこの夫妻の性格なのか分からんが非常にありがたい。話を聞くところによると、この家の前の持ち主は夫妻の友人だったのだが二年前に外でアラガミに襲われて亡くなったらしく、ここに引っ越してきた俺に何かしら思うところがあるらしい。
何かしら困ったことがあったら相談して欲しいと言い残して、夫妻は家に戻って行った。彼らの後ろ姿を視線で追ってみて分かったのだが、どうや夫妻の住む家はこの家の隣らしい。いやはや、カナメ同様この世界でああいった人間に出会えるというのは、中々にいい気分になるな。
これだけでもここに来た甲斐があったというものだ、存外ここの生活悪くはないな。………仕事は最悪だが。
さて、ビーツを煮たものを濾してから別の鍋で豚肉の塊をビーフストックで煮込み、ローリエ、オールスパイス、黒胡椒で香りを…………………今度は電話か。ん?カナメからか。
「ああ、マキナさん?今、大丈夫ですか?」
とりあえずしばらく煮込むだけだから、別に問題ないな。
「構わないぞ、どうしたんだ?」
「いえ、コトミの…ああ、二人目の娘の名前なんですけど、コトミの為に色々と送っていただいてありがとうございます。すぐにお礼を言おうと思っていたんですけど、中々時間が取れなくて…」
「いや、気にするな。別段大した事でもないし、俺自身金を使う機会があまりないから偶にはこういうことで使うのが社会のためだろう?」
すると、電話越しに微かな笑い声が聞こえた。カノンあたりだろうか?
「マキナさんらしいですね。今は何をしているんですか?こちらではあまりに見かけないんで気になったんですけど」
「ああ、ロシアで面倒な仕事だ。細かい事は教えられんが、当分ここにいなきゃならん。全く……あのマッドサイエンティストめ」
「サカキ博士ですか……遠くからですが応援していますよ」
「ああ、ありがとう」
俺の周囲でこういう心のこもった労いの言葉をかけてくれるのは、カナメやコトハ位しかいないので、こういった言葉は非常にありがたい。
「それと、今の仕事が終わったら、またうちに遊びに来てください。カノンも喜びますよ」
「………ああ、考えておくよ」
以前、カナメの家に行った時にマントをカノンにやたらと引っ張られたのが思い出されるな………正直、マントは俺の体の一部を変化させた物なんで引っ張られると痛いんだ。最後に台場家を訪れたのは去年の年始だったな。とりあえずおじさん呼ばわりだけは何とかやめさせられたが、代わりに大砲の模型をせびられたんだった。いや、それ程高い物でもないのだから別段気にするような事じゃないんだが、未来の彼女をしる俺からすれば彼女と大砲というのは余りに不吉すぎる組み合わせだ。
それも結構な勢いで模型を欲しがってい
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