第十二章 妖精達の休日
第三話 お友達
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どうしようもない。
例え魔法を使ったとしても、もうどうしようも出来ない。
確実に来る未来を前に、逃げるように生徒たちの瞼が固く閉じられる。それはハルケギニア最強の一角である空中装甲騎士団も同様だった。主たるベアトリスの死を目前にしながらも、とうの昔に体力も精神力も限界まで来ていた彼らは、ただ立ち尽くし見ていることだけしか出来ないでいた。いや、例え精神力が残っていたとしても、どんな魔法を使おうと、あれだけの勢いで迫る風竜を止めることが出来たとは思えない。
生徒たちと騎士たちの間に、絶望の声が上がり―――一際大きな音と共に、辺り一面に土砂と共に土煙りが立ち上った。
―――自分が特別な存在だと考えたこともありませんでした。
何時も……生まれてきてからずっと……隠れて生きてきたから……。
自分がエルフと人間のハーフだと知ったのは、物心が着いた頃で、その時にはそれがどんな意味を持つのかなんて何も知らず、ただ無邪気にそうなんだとしか思うだけで。
それが、どれだけ疎まれる存在かだなんて……考えもせず……。
ああ、本当にずっと……逃げてばかりの人生……。
世間から隠れ潜むように、母と共に大きな屋敷で過ごしていたまだ幼かった子供の頃……。
母の存在がバレ、騎士たちに母が殺されウエストウッドの森へと逃げて隠れて過ごしてきた日々……。
逃げて、隠れて……一生このまま隠れて生きていくのだろうと……。
外の世界で暮らすなんて、夢にも思わなくて。
ただ、姉さんが時折連れて帰ってくる子供たちが話す外の世界を想像しながら、永遠に来ないだろう何時かに外の世界へ出る事を夢に想いながら……変わらない閉じた世界で過ごす日々……。
でも、そんな日々にある日変化が生まれました。
わたしに……友達が出来たの。
ウエストウッドの村で共に暮らしてきた子供たちは皆、わたしよりも小さく幼かったから、友達と言うよりも弟や妹で、だから、彼女はわたしに出来た初めてのお友達。
あの日、森の中を散歩していた時に見つけた彼女は、今にも死にそうで、でも、そんな事を一瞬忘れてしまいそうになる程、彼女は綺麗で。
直ぐに気を取り直して、母の形見でもある指輪の力を使って彼女を癒して村まで連れ帰った後、何日も経ってから彼女は目を覚ましました。
目が覚めるまでの閨A世話をしながらずっと想像していました。
彼女は一体どんな声で、表情で、性格で、趣味で……想像の中で彼女と話をして―――直ぐに胸に空いた穴の闇に消えていきました。
例えどんな人であっても、わたしがエルフ―――ハーフエル
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