第十二章 妖精達の休日
第三話 お友達
[6/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ュたちであるが、そんなもので竜の攻撃は防げない。来るだろう痛みに耐えるよう、ギーシュたちが奥歯を噛み締めた瞬間―――一陣の風が吹いた。
不意に生まれた頬を叩く風に、風の名を持つ竜は何を感じたのか、動きを止め風が吹く方向へと顔を向けた。
竜の細まった瞳孔に映ったのは、一人の騎士が駆ける姿。
見えないナニカを肩越しに振りかぶり、竜へと向かい駆ける騎士は、竜の視線を感じたように顔を上げた。
竜の視線と騎士の視線が合わさり。
騎士の手に力が込もる。
同時―――騎士が吠えた。
「風王鉄槌ッ!!」
騎士が咆哮と共に見えぬナニカを振り下ろし、風が吹き荒れた。姿なき鉄槌の正体は風。大気を押しつぶしながら進む風の鉄槌は、狙い違わず三体の風竜へと向かう。見えぬ風の鉄槌に気付いた風竜であったが、空の上ならともかく大地の上ではその機動性は格段に落ちる。結果、避けることは叶わず馬車程の大きさのある三体の竜が、まるで人形のように吹き飛ばされてしまう。
「「「―――なッ?!」」」
騎士団、観衆から驚愕の声が上がる。
生徒たちや騎士団の中には、風による攻撃だと気付く者はいたが、その威力は想像の外にあった。彼らが予想した魔法の名はウインド。しかし、それはせいぜいが風を吹かすだけの魔法である。馬車程の大きさはある風竜を三体も薙ぎ倒すだけの威力はない筈であった。
あまりの想像外の光景を前に、驚き固まる皆の中、吹き飛ばされた風竜が頭を振りながらも立ち上がると、翼をはためかせ始めた。本能的に危険を感じ取った風竜たちが、安全地帯である空へと逃げようとしているのだ。
一体、二体と空へと風竜が飛び上がる中、最後の風竜が飛び上がるため足に力を込めた時、横合いから一つの影が飛びかかってきた。
「ハアッ!」
「―――なっ―――ぶッ?!」
ぞくりと背筋に走った怖気に、風竜に跨った騎士が顔を横に向けると、そこには視界いっぱいに広がる具足に包まれた足の姿が。
何かを叫ぼうとした騎士であったが、それが形になる前に顔面を蹴り飛ばされ竜の上から蹴り飛ばされてしまう。騎士を蹴り飛ばした者は、そのまま器用に先程まで竜騎士が跨っていた位置に腰を下ろす。
風竜が主ではないものが自分に跨っていることに気づき、長い首を曲げ、背に乗る無礼者に噛み付こうと歯を剥き出しにする―――が。
「――――――」
背に跨る者の射殺すような眼光を受けると、風竜はびくりと身を震わせそろそろと顔を前へ戻した。
「いけ」
反抗心が無くなった事を確認すると、竜の背に跨った者は、軽く腹を蹴り手綱を引いた。
風竜は逆らうことなく素直に命令に従い、翼をはためかせ空へと飛んでいく。その動きは流れるような淀みのない動きで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ