第十二章 妖精達の休日
第三話 お友達
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誰かがポツリと声を零した。
届いていない。
そう。
届いていないのだ。
立ち上る土煙の端から姿を現したもの。
それはギーシュと空中装甲騎士団の戦いをベアトリスの背後で見ていた観衆たち。
彼らが土煙の中から無事な姿を見せている。
しかし、それはありえない。
空から落ちてきた風竜が進むルートの上にいた彼らが無事でいられる筈がないのだ。彼らの前にいたベアトリスが先に風竜にぶつかるとは言え、そんなもの盾にもなりはしない。風竜は速度を落とすことなく彼らに向かって突っ込んでいたはずなのだ。
なのに、彼らは無事である。
何故?
どうして?
誰もがその異常に気づき始めた時、一陣の強風が吹いた。
唐突に起こったその風は、風のメイジの誰かが起こした風であろう。意志を持つように土煙を吹き飛ばすように吹いた風により、土煙が段々と薄まっていく。
「―――赤い……光?」
土煙が消える間際。
一瞬。
観衆の中の数人が土煙の中に赤い光を見た。
それは何処か花の花弁に似ていたような気がしたが、直ぐにそれは見えなくなってしまう。
気のせいか? と彼らが疑問符を浮かべるが、そんなものは土煙が晴れた先に現れたものを見て何処かへと消えてしまった。
「……うそ、だろ」
「……あり、えない」
彼らが目にしたもの。
それは風竜に轢き殺され赤い血溜りと化したベアトリス―――ではなく。
その前。
ティファニアに抱きしめられ蹲るベアトリスの前に立つ男。
男が伸ばした右手の先には、地面を大きく抉った形で蹲る風竜の姿があった。
それはまるで、男が風竜を止めたかのようで。
否。
まるで、ではなく、男は伸ばした右手一本で迫る風竜を止めたのだ。
空中装甲騎士団も生徒たちも誰もが疑いもなくそう信じた。
立っていた男が他の誰かなら別の可能性を考えていただろう。
しかし、その男が今まで幾つもの信じられないほどの武勇伝を作り上げた者ならどうだ。
七万の軍勢をたった一人で破った男だ。
彼ならば風竜の一体ぐらい片手で止めてしまってもおかしくはない。
そんな事さえ考えてしまう。
その男―――。
「エミヤ―――シロウ」
「―――全く無茶をする」
熾天覆う七つの円環を消すと、士郎は肩越しに振り返りベアトリスを抱きしめているティファニアに向かってため息混じりで声を掛けた。
「あ、あはは……つい、勝手に身体が動いていました」
ベアトリスから身体を離し立ち上がったティファニアは、困ったように笑いながら士郎に向
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