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剣の丘に花は咲く 
第十二章 妖精達の休日
第三話 お友達
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 暖かい?
 
 ―――あ―――れ?

 ベアトリスの身体に回ったティファニアの腕に更に力が入り、ベアトリスの脳内に渦巻く混迷に拍車が掛かる。

 何故?
 どうして?
 怖くない(・・・・)
 つい先程まで、いや、今も敵対している相手が自分の身体に腕を回し、抱きついているのに、何で安心しているの(・・・・・・・)
 
 まるで幼い頃、母親に抱かれている時のように、心地よく、安心している自分が理解出来ないベアトリス。自分を強く抱きしめる腕の力は痛く感じる程なのに、何故恐怖ではなく安堵を感じるのか?
 ティファニアの柔らかな身体に顔をうずめながら、ベアトリスは幾度も自問する。
 
 何故?

 どうして?

 何で?

 こうも安心出来るのか?
 
 まるで……まるで……ああ……まるで、幼い頃、雷の音が怖いと泣くわたしを、お母さまが抱きしめてくれた時のように……。

 怖い雷の音からわたしを守って……守って(・・・)……まもって(・・・・)……?

 ストンと何かが胸に収まる感覚を得たベアトリスは、自然と顔を上げていた。
 顔を上げると漏れる、吐息を感じられる程の近さにティファニアの顔があった。
 
 ―――綺麗。

 知っていた。
 最初から知っていた。
 初めて見た時から思っていた。
 綺麗だと。
 美しいと。
 見惚れて。
 憧れて。
 手が届かないものだと。
 だから。
 ……だから。
 
 ―――ああ、本当に何て綺麗なの。

 姿形だけじゃない。
 その心も美しい。
 
 どうして?
 何で?
 あなたは―――。

「―――どう、して?」

 口から溢れた言葉は小さくかすれて、音にも形にもなってはならず。
 だから、彼女の耳に届いたとは思わなかった。
 でも、彼女はわたしの声に気付いたように目線を下げ、わたしの目を見て―――安心させるように優しく微笑んで。 



 ―――そして、何十もの爆弾が一気に爆発したかのような音が広場に響き渡った。






 土煙が収まらない内に、これまでで最大の土煙が舞い上がった。
 発生場所は、ベアトリスが立っていた場所の近く。
 遠目で見ていた空中装甲騎士団(ルフトパンツァーリッター)や生徒たちは、起こってしまった悲劇に声もなくただ目を見開き見つめているしか出来ないでいた。
 もうもうと舞い上がる土煙が、まるで苦痛と嘆きの悲鳴のように感じられ、生徒の中には腰を抜かし地面に尻を落とす者が何人もいた。
 立ち上った土煙が頂上から落ち始める頃、目を逸らし、泣き出す者が現れる中、幾人かの者が異常に気付き始めた。

「……あれ?」
届いていない(・・・・・・)?」
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