第十二章 妖精達の休日
第三話 お友達
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フだと知れば恐怖に顔を歪め悲鳴を上げて逃げていくだろうと。
森の中に偶然迷い込んできた人がわたしを見て上げた悲鳴が耳に蘇り、もうどれだけ流したか忘れてしまった涙を零した。
だから、目を覚ましてわたしの正体を知っても変わらず接してくれた事が、どれだけ嬉しかったなんて、きっと彼女は分からなかった筈。
彼女はとても綺麗で、そして信じられないほど強かった。
大きな獣も木の棒で倒してしまうし、森の中に迷い込んできた野盗たちも一瞬でやっつけてしまう程に。
その事はとても助かったけど、でも、もの凄くご飯を食べることだけはちょっと……少し……だいぶ、困りました。
でも、それ以上にとても楽しかった。
彼女とは色々とお話をしました。
その殆どは、その日、村で起きたたわいない小さな出来事でした。
彼女は自分から話すということはしなかったから、わたしが話しをして彼女が相槌を打つだけだったけど、わたしはそれで十分楽しかった。
でも、時折、何かの拍子で彼女が話しをしてくれることがありました。
その中に、何度も出てくる人がいました。
初めて彼女の口から彼の話を聞いたのは、何時だったか……。
確か切っ掛けは……。
ああ、そう……思い出した。
あれは確か、わたしが何時か森の外へと出たいという夢を彼女に語った時、でも叶わない夢だと笑うと、彼女が話し始めたんでした。
『世の中には、それこそ夢としか言いようのない夢を叶えようとする人がいる』―――って。
“正義の味方”―――お伽話の騎士のような……そんな絵物語の登場人物になろうとする人がいると……。
彼の事を話す時の彼女は、何時もの凛々しさが嘘のように緩み、幸せそうに笑ってました。
彼女の語る彼の姿は、彼の目指す夢の姿とは程遠く―――弱く、愚直で、不器用な……でも真っ直ぐな少年の姿。
ただ、ただ、誰かの為に身を削り、傷つきながら、それでも笑う少年の話を聞く度に、わたしの胸に小さな火が灯りました。
それが何なのかは分かりません。
ただ、それがとても心地よいものであることは確かでした。
夜、時折見る悪夢に目を覚まし、涙に滲む夜の闇の中、湧き上がる様々な感情で溺れのを、昔のわたしはただ目を閉じ必死に朝が来るのを震えて待つだけでした。でも、彼女から彼の話を聞いてからは、わたしは彼女の話してくれた彼の事を思いだし、胸の奥で灯った小さな明かりを感じると、何時の間にか眠る事が出来ていました。
何故、そんなに意識しているのか自分でも分かりません。
何があろうと、前へと、夢へと向かう彼の姿に憧れたのか……。
倒れても、傷ついても諦めない彼の姿に勇気付けられた
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