第三話
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「――ッ!!」
すさまじいデジャブを感じ、反射的に身を固くする。が、運のいいことに、俺の危惧する事態はそのまま数秒硬直していても訪れることはなった。
先のセリフと声色からして、男性の二人組だと思われる声の主たちは、どうやら俺に体当たりを敢行する気はないようだ。
このゲームでは初対面の人に体当たりであいさつするのがマナーなのだと一割くらい本気で思っていた俺は、その事実にまず胸をなでおろす。
となると、この声の主たちはいったい誰なのだろう。シーラがこの店のことを『ベータテスターでもごく一部のプレイヤーしか知らない穴場中の穴場』と評していたことから、その二人、あるいはどちらか一人がその『ごく一部のテスター』だというのは間違いなさそうだが――また変人だったらどうしようか。
そんな不安を体のこわばりと一緒に意識の奥底におしこめ、恐る恐る振り返ると――
「あ!キリトじゃん!おーい!久しぶりー!」
男プレイヤー二人の姿が見えるはずだったのが、なぜか代わりにシーラの腰にさがった片手剣が目に入った。
「……へ?」
わけのわからぬまま目線をまた少し上げる。すると今度は間違いなく、声の主であろう二人の男性プレイヤーの姿をとらえることができた。ついでにその二人に走っていくシーラの後ろ姿も。
知り合いだったのだろうか。ハイタッチの構えで突撃したシーラを苦笑いで迎えた黒髪勇者風、ついでに赤バンダナの二人に目で礼を送り、何やらやんちゃに暴れる小学生を見守っているような、そんな謎の気分に襲われながら、俺はカオスになりつつある三人の集団へ歩み寄って行った。
バンダナの方は『クライン』、もう一方の勇者は『キリト』といった。
俺の想像通り、キリトはベータテスト経験者だった。シーラとも知り合いらしく、ベータテスト期間中はパーティーを組んだこともあったらしい。それにシーラ曰く、そのベータテスターの中でも五本の指に入るくらいの強者で、ベータテスト中の最高到達層の一つ下、第七層を攻略したメンバーの一人だという。
そして俺と同じく初心者のクラインは、直感でキリトをベータテスト経験者だと確信し、序盤のコツを教えてくれと頼みこんだらしい。それで二人とも、この穴場へ買い物しに来たというわけだ。
「へえ、なんだかあたしたちと似た巡り会わせだね」
「そうだな、出会いの場面以外は」
冗談めかしてそう言うと、「だからごめんってば」と中途半端な泣き落としで腕をゆするシーラに続き、彼女持ち前のぶっとびテンションに押されてフレンド登録してくれたキリトとクラインが、まだその毒気が抜けきらぬ引きつった笑顔を返してくれた。
空気が一巡すると、ふとクラインが俺とシーラの腰のあたり――おそらく武器だろう――を一瞥し始め、右の手で顎
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